第八十四話 ボヘニアのヂシュカ
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
皇聖下は賢明な御方です。その方のお墨付きが頂ければ、皇帝も無下には出来ません」
そう言うと、フシネツ神父はジャガイモ畑を見渡した。
「今のこの畑は種芋作りの為の畑ですが、やがてボヘニア全体の畑で、このジャガイモの子供達が採れる様になります。その時が来るまで、ヂシュカ君には血の気の多い人達を抑えるようお願いします」
そう言うとフシネツ神父は再び農作業に戻り、ヂシュカも農作業を手伝いを始めると一時間ほど経った。
フシネツ神父は畑の手入れを終えたのか、神父服に付いた土を払うと教会に戻ろうとして、ふと、立ち止まりヂシュカの方に向き直した。
「ああ、言い忘れるところでした」
「なんですか?」
「もしも私の企みが失敗して、処刑されそうになっても決して助けないで下さい」
「え!? 何故ですか!?」
「自分でも一滴の血を流さずに独立しようなんて、甘いとは思っています。ですので失敗したら、自分のわがままの始末は自分で付けます」
「神父様……」
「今は大切な時期です。私を救おうとして、大切な志士達を無駄死にさせるような事はしないで下さい」
言いたい事だけ言うと、フシネツ神父は教会に入っていった。
☆ ☆ ☆
一ヶ月が過ぎ、ロマリア教皇がプラーカに来る日が近づいてきた。
教皇来訪の目的は、老いたゲルマニア皇帝の見舞いと、皇帝の居城のプラーカ城内に建てられた聖ヴァツラフ大聖堂での大規模なミサだった。
この時ヂシュカは、独立強硬派を抑えながらフシネツ神父の作戦成功を願っていた。
ヂシュカはフシネツ神父がどの様に教皇に近づくか詳しい事を聞いていなかったが、ミサの時に何らかの形で教皇に接近すると予想はしていた。
だがミサ当日、フシネツ神父は教皇の前どころか、ミサにすら顔を出さなかった。
ヂシュカ達チェック貴族は、ゲルマニア貴族に属している為、大聖堂に入ることすら許されず、群集と共に大聖堂の庭の隅っこでミサに参加する事を強要された。
大聖堂の庭で、中の様子を窺っても、なんの騒ぎも起きず。結局フシネツ神父は現れずミサは滞り無く終わってしまった。
チェック人の独立とロマリア教改革に燃えていたフシネツ神父が、ミサに現れなかった事でヂシュカは状況の異常に気が付いた。
『もしかしたらフシネツ神父は日和見したのか……?』
チェック貴族達は、そう言い合い。ヂシュカに一喝された。
ミサから三日後。
教皇はスケジュールを消化しロマリアへの帰路へ着くと、プラーカ全体がホッと息をつくように気が抜けたような空気が漂っていた。
ヂシュカは消
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ