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水の国の王は転生者
第八十四話 ボヘニアのヂシュカ
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、現在のトリステイン王妃カトレアが率先して毒見して啓蒙する事で、平民達に迎え入れられたと思われた。

 だがロマリアの旧弊な聖職者達は、教義の中で『パンは始祖ブリミルの身体』と教えている事から、ジャガイモといった新種の食物を嫌い、取り入れようとする者達を『破門』の脅しつきで妨害していた。
 その甲斐あって、トリステイン以外の諸国ではジャガイモは悪魔の実と言われ嫌われている。
 だがフシネツ神父はその脅しに屈せず、この教会の裏の僅かなスペースを使ってジャガイモを栽培していた。

 ヂシュカはその行為に感銘を受け、何かにつけフシネツ神父の教会を窺うようになった。

「確かにロマリアも変わらなければなりません。ですが、プラーカは謂わばゲルマニアにおけるロマリア旧教の総本山です。簡単に自分達の看板を下ろすはずがありません。それどころかフシネツ神父の命を……」

 ヂシュカは、フシネツ神父の安否を危ぶんだ。

 フシネツ神父は、チェック貴族のカリスマ的存在でヂシュカ自身も、他のチェック貴族も尊敬していた。
 だが、他のプラーカの聖職者にとっては目の上のたんこぶで、フシネツ神父を敵視する者も多い。

「私の事などどうでもよろしい。ところで、チェック人独立の為の資金が、外国からもたらされているのはヂシュカ君も感付いているでしょう。ですが、最後に必要なのは我らチェック人の覚悟なのです」

「確かに……急に金回りの良くなった途端に、声が大きくなった連中が増えたのは私自身気に入りません」

「ヂュシカ君も覚えておくと良い。資金を提供してきた者たちは、我らチェック人のささやかな願いなどどうでも良いのです。ただ私達が暴れる事でゲルマニアが不安定になれば良いと思っているのですよ」

「それは……」

 ヂシュカは薄っすらとは感付いていたが、謎の資金提供は彼自身渡りに船だった為に、それほど真剣に考えなかった。

「私は安易に暴れて、私達のプラーカを故郷ボヘニアの地を戦火に巻き込む事を良しとしません」

「その為に、ロマリア聖庁の力を借りようというのですね? ですが今の保守派の腐敗した連中に、なにを言っても聞く耳持たないでしょう」

「そんな事はありません。実は一ヵ月後にロマリアの教皇聖下がプラーカを訪れるそうです。私は教皇聖下に直接お会いし、チェック人を始めとするスラヴ人全体の現状を訴える積りです」

 農作業の手を止めると、フシネツ神父はヂシュカだけにこの計画を話した。

「教皇聖下に……ですか?」

「そうです。教皇聖下からお墨付きを頂ければ血を流さずに独立は成るでしょう」

「そう簡単に上手く行くでしょうか……」

 ヂシュカは不安そうすると、フシネツ神父は『心配ないですよ』と逆に励ました。

「教
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