第八十四話 ボヘニアのヂシュカ
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るぞ!」
チェック人貴族達が盛り上がっていると……
「待て待て!」
今まで黙っていた一人のチェック貴族が待ったをかけた。
「ヂシュカ。もしかしてお前は俺達の義挙に反対する積りなのか?」
別のチェック貴族が、ヂシュカと呼ばれた碧眼の男に詰め寄る。
「反対と入ってない。私はそんな行き当たりばったりでは、蜂起は失敗するといっているんだ」
「行き当たりばったりでは無い! 現に我らはこの日の為に艱難辛苦の日々に耐えてきたではないか!」
「そうだそうだ!」
「ゲルマニア皇帝の命は高齢で明日をも知れないというのに、そんなボヤボヤしてたら、皇帝に制裁を加える間に死なれてしまう」
「落ち着け! 我々の目的は皇帝を殺す事ではなく、チェック人の国家を作る事だ。目的を履き違えるな!」
「ぐ、ぬぬ……」
「た、確かに……」
ヂシュカの説得で、場の熱気がトーンダウンした。
さらにヂシュカは続ける。
「とにかく待って欲しい。神父様に相談したい事もあるし、他の同志達にも連絡をしなければならない。とにかく待て」
「……分かった。この場はこれでお開きにしよう」
「ありがとう」
「気にするな。神父様によろしく伝えておいてくれ」
「分かった」
こうして「麦畑の馬蹄」亭での会合は、何の実りも無く終わった。
……
帝都プラーカに西日が差し掛かる頃、市内の下町に相当する裏通りには、小さな教会が建っていて、その門前には先ほど「麦畑の馬蹄」亭で、チェック貴族の暴発を抑えた碧眼のヂシュカが訪れていた。
「神父様、居られますか?」
ヂシュカは声を掛けたが、何処からも返事が無かった。
教会の周りには多くの尖塔が立ち並び、西日で出来た尖塔の影が小さな教会を覆い、教会内を日没後の様に暗くしていた。
「居ない……という事は裏か」
ヂシュカは教会の裏に回ると、裏に作られた小さな畑で、白いものが混じった髭をたらした壮年の男が、黒い神父服を泥だらけにして農作業をしていた。
神父が育てているのは、現トリステイン国王のマクシミリアンによって、新世界からもたらされたジャガイモだ。
ゲルマニアも先の大寒波で多くの犠牲者を出したが、寒波の影響で麦が不作になり、パンが貴族以外に出回らなくなった状況に陥ったが、神父はジャガイモを救いの食べ物として目を付け、わざわざトリステインまで足を伸ばして手に入れて育てていた。
この教会の神は、昨今の聖職者では珍しい無私の人だった。
「フシネツ神父。こちらでしたか」
「やあ、ヂシュカ君。会合はどうでしたか?」
フシネツと呼ばれた神父は、農作業をしまま、手を止めずヂシュカに応対した。
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