第十二話 風使その一
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第十二話 風使
征一狼はこの時編集部にいた、そうして仕事をしていたが。
その中でだ、同僚にこんなことを言われていた。
「この前取材に行ったシスターの」
「あの教会のですね」
「夏澄火煉さんですが」
「あの人ですか」
その名を聞いてだった、征一狼は眉を動かして応えた。
「どうしたんですか?」
「いえ、本誌で紹介しましたら」
「ああ、大人気だそうですね」
「こんな奇麗なシスターさんおられるのかって」
同僚は征一狼に笑って話した。
「読者さんの間でもです」
「評判になっていますか」
「そうなんですよ」
「そうでしょうね」
征一狼は彼女そして自分も天の龍でありこの世界の運命を巡って戦う者達であることを隠しながら応えた。
「あの人でしたら」
「そうですよね、ただ」
「ただ?」
「あの人の昔のことは」
「ああ、風俗のことですか」
「そのことは伏せておいて正解でしたね」
「あの人は笑って書いていいと言われましたが」
それでもとだ、征一狼は同僚に話した。
「やっぱりですね」
「そうしたプライベートのことは」
「伏せておくべきですね」
「そうですよね」
「僕もそう思います」
穏和だが確かな声で話した。
「そうしたことは」
「本人が許可を出しても」
「そうした雑誌はないですし」
「伏せておいて」
「そうしてですね」
「紹介すべきですね」
「そう思います、ただ」
ここでだ、征一狼はこうも言った。
「あの人でしたら素敵なお相手も」
「ああ、出来ますね」
「そうですね」
「ええ、ただ」
同僚は火煉について考える顔になって述べた。
「あの人カトリックでしたね」
「ええ、そうでしたね」
征一狼もそれはと応えた。
「あの人は」
「カトリックの聖職者は結婚出来ないですよね」
「そうですが」
それでもと言うのだった。
「実は結構です」
「公でなくですか」
「表立ってではないですが」
「そうしたことはありますね」
「昔から」
「じゃああの人も」
同僚は征一狼の話を受けて言った。
「きっとですね」
「そうした方とです」
「巡り合えて」
「幸せになれます」
「そうですね、蒼軌さんみたいに」
こうも言ったのだった。
「そうなれますね」
「僕みたいですか」
「だって蒼軌さんご自身の机にいつも奥さんと娘さんの写真飾ってあって」
見れば今もある、笑顔で一家が写真の中にいる。
「何かあるとご覧になられてますね」
「そう言われますと」
征一狼も否定しなかった。
「そうですね」
「ですから」
それでというのだ。
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