水神竜の憂鬱
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「それは違うよ」
あまりのいい人っぷりに感動している俺たちを優しげな表情で見ていたはずのメルクフォビアさんだったが、ハッピーたちの言葉を聞くとそれが一変した。まるで勘定をなくしたような、狂気な瞳でこちらを見ていたのだ。
「こう見えてもね、昔は大勢の人間を殺してきた。それはもう虫けらのように」
その表情はあまりにも真を帯びており鳥肌が立つ。しかし彼のそんな表情はものの一瞬で崩れた。
「エレフセリアが私を狙うのは当然だよ。私が殺した人間の中には彼の友人や家族もいたかもしれない。弁明する気はない・・・当時の私にとって、それはごく自然な行為だった。強者が弱者を狩る、それが当たり前の時代だった」
「どこかで心境が変わったのか?」
エルザさんの問いに彼は思い出し笑いを浮かべながら答える。
「そうだね、きっかけはカラミールだった。実はね、彼女を助けるつもりはなかったんだ。海で見つけた餌程度にしか思ってなかった。それが妙に懐かれてしまってね。気が付いたら共存の道を進んでいたよ」
苦笑いを浮かべる水神竜さんだったが、俺たちはそれを聞いてますます敵対することはないだろうと思ってしまい、釣られて笑っていた。
「このままずっとこうしていたい気持ちもあるんだけど、そろそろ私はこの世界から消えねばならない」
このまま無事に解決できるかと思っていた矢先、そんなことを言い出す水神竜さん。人のために行動し、共存の道を進もうとする彼がなぜそんなことを言い出すのかわからなかった俺たちはそれに驚愕することしかできなかった。
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