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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
3.5章
3.5−3:御前に捧げる奇術
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待て、待つんだ」
颯人に制止させられ、ドラゴンは苛立たしいと言いたげな唸り声を上げた。言葉には出さないが、何故余所者の排除を邪魔するのかと言ったところだろう。
最初は颯人もこのままドラゴンに任せようと思った。だが逃げる光の珠を見ていて、次第にその気が失せたのだ。
何と言うか、逃げる光の珠が子供のように泣いているような気がしたのである。
「そう言えば、ツタンカーメンって確かガキの頃に即位させられた挙句大人になる前に死んだんだったよな」
資料によれば即位したのは8〜9歳の頃。そして僅か10年弱で在位期間を終えた……つまりは命を落とした悲劇の少年王なのだ。本来であれば子供らしく遊んでいるべき時期に、欲望と陰謀渦巻く政治の世界に巻き込まれ、何の楽しみも味わう間もなく若くして命を落とした。
それを考えるとこのままドラゴンに始末させるのが忍びなくなったのだ。
「そう言う訳で、ここは俺に任せてもらう。お前は今回下がってな」
颯人の言葉を理解したのかどうかは分からないが、ドラゴンは呆れとも苛立ちとも取れる溜め息を鼻から吐いて何処かへと消えていった。
ドラゴンが居なくなると、颯人は一息つき改めて光の珠……否、長年の伝承により歪められたツタンカーメンの思念と向き合った。
「それじゃ、初めまして王様。俺は明星 颯人。アンタらに分かり易い言い方をすれば、そうだな……奇術師で伝わるか?」
そう言って颯人は芝居がかった仕草で恭しく頭を下げた。相手はただの光の珠なので、表情の類は分からない。ただ、何となくこちらに興味を持ってくれているのだろう事は分かった。
こうして直に対面して、颯人はあの光の珠とそれに掛けられた術式に見当がついた。何者かは分からないが、下手人はツタンカーメンの仮面に残った思念と伝承を組み合わせて、周囲の人間を無力化する効果を生み出させたのだろう。
その核となっているのが、今彼の目の前に存在する若くして命を落とした少年の王の残留思念。無念の内に亡くなった若き王の残渣を無理矢理核に捻じ込んだのだ。
とくれば、話は簡単だ。思念に残った無念の思いが力の源になっているのであれば、その無念を忘れるくらい楽しませてやればいい。起こったことそのものを無くす事は出来なくとも、新しい感情……即ち楽しませることで憂いを晴らさせることは出来る。
何を隠そう、それが彼のもっとも得意とする事だからだ。
「さて、王様! こんな場所で言うのもおかしな話だが、これからあなたに夢の様な一時をお送りしましょう!」
***
それから数時間後、颯人は気付けば本部の医務室で寝ていた。
「……ん? お……?」
「颯人ッ!!」
目を覚まし周囲を見ると、彼を心配して
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