273 唯一の取り柄
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は初めてだったのだ。「前の世界」にいた時は「前に好きだった女子」とはそのような事はできなかった。いや、一緒に手を繋いで滑る事をする勇気すらなかった。断られるかもしれないという不安もあり、積極的になれなかった。しかし、その「前に好きだった女子」に対してできなかった事が今こうしてできている。藤木にとってこれ以上にない嬉しい事だった。
「りえちゃん、どうだい?凄く速く滑ってるだろ?」
「ええ、でも、ちょっと怖いかな?」
「そっか、それじゃあ、少しゆっくり滑るよ・・・」
藤木はスピードを遅くして滑った。
(りえちゃん・・・。ここで会った時はあまり嬉しそうじゃなかったけど、今は何かとても僕に興味を持ってくれてる・・・。祝言で一緒になってくれたからかな、それとも、僕の気持ちが伝わったからかな?)
藤木はそんな事を考えながらりえと滑った。
「茂様、りえ様、お似合いですよ〜!!」
遊女達が声援を送った。
「あ、いやあ・・・」
りえも照れながら笑っていた。そして藤木はりえと暫く滑り続けた。そしてりえはまだ上手く滑れない事もあってか、藤木に少しずつ滑り方を教わっていた。
「茂様、りえ様!」
一人の遊女が呼んだ。
「そろそろお昼ご飯の時間ですよ〜。体も冷えてると思うので温かく鍋料理を用意させていただきました〜」
「あ、ありがとう。りえちゃん、行こう!」
「ええっ!」
ふじきとりえは氷河を出て炊事がされた場所へと移動した。鍋料理には葱に人参、白菜と色々は要っていた。そして肉のような物が入っている。
「いただきます!」
藤木は肉のような物を食べる。だが、今までに食べた事のない感触だった。
「こ、これは何だい?」
「これはもつ肉といいます。けっこう美味しいと聞きました。如何でしょうか?」
「す、すごい美味しいよ」
「美味しいっ?それじゃあ、私も貰おうっ!」
りえももつを楽しむ。二人はもつをたくさん食べると共に身体を温めたのであった。
「茂様。午後も滑ってください!私ももう一回見たいです」
「私も、私も!!」
「うん、皆に見せてあげるよ」
そして藤木は休憩後、もう一度滑り出す。またもやりえや多くの遊女から拍手が送られた。
(やっぱり僕はスケートが一番の男なんだ!)
「ふ、藤木君・・・」
りえが呼んだ。
「何だい?」
「もう一度、一緒に滑ってくれるかしら?」
「うん!」
藤木はりえと共に滑った。二人共楽しそうにスケートを楽しむのだった。
「りえちゃん」
「ん?」
「僕は他に出来る事が何もなくてさ。夏休みに会った時、スケート見せたいって言ったからそれを見せられてよかったって思うよ・・・」
「うん、私も藤木君かっこよく見えたわっ!」
りえは共に滑りながらも藤木の前に立った。そしてキスをした。
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