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第七十二話 海軍の記憶その八

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「操舵手も倒れてたけれど」
「その人どうなったの?」
「そのまま倒れたらよかったのに」
 それがというの。
「右か左に倒れて」
「あっ、船の舵がそっちにね」 
 かな恵も理解して応えた。
「いって」
「それでなの」
「先頭の艦がそっちに行ったから」
「後の船も続いて」
「そこにさらにね」
「攻撃出来たのね」
「こんな凄いことがね」
 尚これは実際にあったことである。
「あの海戦で起こって」
「勝てたのね」
「もう無茶苦茶ね」
「運がよかったのね」
「この人ね」
 東郷の肖像画を観つつかな恵に話した。
「どうもね」
「それって何か麻雀でね」
「あれっ、かな恵麻雀しないでしょ」
「しないけれど聞いたことあるのよ」 
 一華にこう前置きして話した。
「ルールも牌のことも全然知らないけれど」
「それでもなのね」
「ええ、バカヅキだってね」
「馬鹿みたいに運がいい?」
「それだってね」
「東郷さんはそうだったの」
「そうみたいね、兎に角運がいい」 
 それに尽きるというのだ。
「それって一番強いかもね」
「戦争だと」
「スポーツでもね、実力伯仲なら」
 そうした勝負ならというのだ。
「もう最後はね」
「運ね」
「万全に戦えて」
 そしてというのだ。
「運があれば」
「勝てるのね」
「東郷さんみたいにたまたまね」
「こっちの攻撃が相手に致命傷になる」
「そんな有り得ないまでに運が強いと」 
 それならというのだ。
「それがね」
「決め手になるのね」
「そうみたいね、麻雀のお話したけれど」
 かな恵はそちらに話を戻した。
「ギャンブルって実は冷静さと勝負を読む頭と勘だってね」
「そういうのが大事ってことね」
「運よりもね」
「そういうのでかつのね」
「そうしたものって聞いてるけれど」
「戦争は極限になると」
「運がね」
 まさにこの要素がというのだ。
「大事ってことね」
「そうなるのね」
「それで運がない人はね」
「実力があっても負けるのね」
「巨人が負けるのが多いこともね」
 百敗に加えてというのだ。
「運もないからでしょ」
「実力もないし」
「スポーツもね」
「運ね」
「そういえばね」
 ここで富美子がこんなことを言った。
「日露戦争って不思議なお話多いのよね」
「どんなの?」
「狐や狸も戦ってね」
 こうしたことがあったと言われている。
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