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第七十二話 海軍の記憶その七

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「まさによね」
「東郷さんはそうよね」
「運もあって」
「それで勝てた」
「そうなったわね」
「運が悪いと」
 留奈は言った。
「戦争って勝てないのよね」
「そうみたいね、これが」
「野球でもそうした人いるしね」
「何でか勝てないってね」
「そんな人いるし」
「戦争でもなのね」
「そんな人いて」
 それでというのだ。
「いざって時はね」
「負けるってことね」
「けれど東郷さんは運もあった」
「そのことも大きかったのね」
「要するにね」
「今の巨人なんてね」 
 一華は邪悪の権化であるこの野球チームの話もした。
「もう運にもね」
「見放されてるわよね」
「何でそうなるっていう展開で」
「負けることもあるわね」
「屋外球場で試合してて」
「相手チームの外野フライが突然の風でホームランになるとか」
「そうした展開あるわよね」
 こう留奈に話した。
「一年に何度か」
「それで負けるのよね」
「只でさえ弱いのに」
 それがというのだ。
「余計にね」
「運もなくて」
「負けるのよね」
「そうなのよね」
 こう話すのだった。
「一年に百敗以上ね」
「そこまで負けてるわね」
「運もなくて」
「超絶的な弱さだけじゃなくて」
 さらにというのだ。
「運がないとね」
「あそこまで負けないわよね」
「どうしてもね」
「百敗は実力で」
「後の十敗は運」
「そんなところね」
「そうよね」 
 こう話した、そして。
 一華はあらためてだ、こんなことを言った。
「運も実力のうちって本当ね」
「そうよね、東郷さんがそうね」
 かな恵が応えた。
「まさに」
「運がよかったからね」
「連合艦隊司令長官に任命されたっていうし」
「いや、聞いたお話だけれど」
 一華はこう前置きしてかな恵に話した。
「この人日本海海戦で有名だけれど」
「この絵もその時のだしね」
「その海戦の前の黄海海戦でね」
「あの旅順の」
「そう、あそこの艦隊に勝ったね」
 この旅順、要塞となっていたそこを陥落させることが日本軍の重要課題であった。それを受け持った第三軍を率いたのが乃木希典だった。
「あの海戦なんか」
「運でなの」
「たまたまね」
 一華はかな恵に神妙な顔で話した。
「砲撃してそれがね」
「砲弾がなのね」
「敵の先頭の艦の艦橋に当たって」
「そうなって」
「艦橋の人達皆倒れて」
 そうなってというのだ。
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