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第七十二話 海軍の記憶その三

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「言えるのよね」
「あの頃はね」
 一華は富美子にも応えた。
「もうね」
「決められた人でなくても」
「然るべき人とね」
「結婚しないといけなかったから」
 だからだとだ、富美子は一華に話した。
「それでね」
「鴎外さんもね」
「結婚出来なくて」
「それで別れたけれど」
「捨てたって言うとね」
「そうなるのよね」
「結構自分勝手な別れ方だったとも聞くし」
 実際にそうした話もある。
「何かファザコンでマザコンで」
「ご両親に逆らえなくてね」
「嫁姑の問題も収められなくて」
「そこでも失敗してて」
「お子さんの名前がね」
 理虹は嫌そうに話した。
「ドイツの名前無理に漢字にあてて」
「今で言うキラキラネームにね」
「してたしね」
 子供達の名前もというのだ。
「外国でどう読まれるか考えてらしいけれど」
「ちょっと以上にね」
「名前もないわね」
「他の海外の人そう名付けないし」
「当時でもね」
「特に脚気よね」
 かな恵は眉を顰めさせてこちらの話をした。
「脚気菌があるとか言って」
「海軍さんの食事によるものって説信じなくてね」
 一華はかな恵にも応えた。
「それでね」
「結果陸軍さんでは脚気の人沢山出て」
「大勢の人亡くなったのよね」
「日露戦争でもね」
 日清戦争でも深刻な問題になっていた、だが彼はあくまで自説に固執してこの問題の解決を出来なかったのだ。
「そうだったしね」
「それ見たらね」
「森鴎外さんってね」
「人間としてはね」
「どうかってなるわよね」
「いや、私ね」
 留奈はこう言った。
「夏目漱石さんのお話聞いて」
「あの人も大概よね」
「DVしてたから」
 自分の家族に対してだ。
「当時は普通でも」
「その中でもかなり酷い方だったっていうし」
「息子さんステッキで殴りまくったりね」
「無茶苦茶だったらしいわね」
「もう暴力教師みたいな」
 尚漱石は松山で実際に教鞭を執っていた。
「そんな風だったみたいね」
「それで被害妄想で」
 一華はこちらの話もした。
「それでね」
「お世辞にもいい人じゃなかったみたいね」
「だから鴎外さんの方がいいかもって思ったら」
「それがね」
「鴎外さんの方がね」
「遥かに酷いのよね」
「これがね」
 まさにというのだ。
「もうね」
「そうなのよね」
「どうにもね」
「しかも権力志向強くて尊大だったのよね」
 富美子は鴎外のこの気質の話もした。
「エリート意識の塊で」
「爵位欲しがっていてね」
「俗物って言えば」
「そうだったみたいね」
 一華も否定しなかった。
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