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星河の覇皇
第八十三部第四章 戦線崩壊その十七

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「負ける気配がするな」
「難しいですか」
「正直な」
「そうですか、じゃあ」
「艦が沈んだら終わりにしてもな」
 そうなってしまっては死亡率がかなり高い、若し轟沈ともなればその艦にいる乗員はほぼ全員が戦死してしまう。
 それでだ、曹長も今こう言ったのだ。
「それでもだよ」
「生きられるならですね」
「生きろ」
 何といってもとだ、伍長に告げた。
「それは言っておくな」
「生きないと駄目ですか」
「確かに死んだら天国に行けるさ」
 このことは間違いないというのだ。
「それはわかるだろ」
「はい、これはジハードですから」
「だったらな」
「死んでも、ですよね」
「天国に行けるさ」 
 このことは間違いないというのだ。
「その時は」
「そうですよね」
「けれどな」
「それは、ですか」
「無駄死にしていいってことじゃないんだよ」
 その理屈にはならないというのだ。
「アッラーは自殺は禁じておられるな」
「それは絶対のことですよね」
「ああ、だからな」
「そうしたことはしないといけないですね」
「自殺みたいにするな」
 絶対にと言うのだった。
「だからだ」
「生きることですね」
「最後の最後までな、勇敢であってもな」
 それでもというのだ。
「無駄死にはしたらいけないんだよ」
「それも絶対のことですね」
「そうだ、だからだ」
「俺もですか」
「死ぬなよ、俺だってな」
 曹長、彼自身もというのだ。
「死ぬつもりはないからな」
「そうですか、曹長も」
「死んだら天国に行きたいさ」
 その時はというのだ。
「やっぱりな、けれどな」
「それでもですね」
「俺も死なないからな」
 絶対にというのだ。
「アッラーが定められた時までな」
「一人一人の運命の時まで」
「絶対にな、だから俺もな」
「死ぬその時まで、ですね」
「生きるさ、だからお前も死ぬなよ」 
 何があってもと言ってだ、そのうえでだった。
 曹長自身この状況でも敗北を感じていても何とか生きようと考えていた。それが彼が考えることであった。
 戦局は曹長が言う通りティムール軍にとって次第に劣勢になっていた、まさに徐々にそうなっていて。
 その戦局を誰よりも広くかつ冷静に見ているのがアッディーンだった、幕僚達は通常艦艇の艦隊を動かすのを今か今かと待っていたが。
 それでもだ、アッディーンは言うのだった。
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