第十一話 魔王と呼ばれる者達その十二
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「しょうもないもんもある」
「そういうの読む位やとやな」
「小説を読むことや」
「その方がずっとええな」
「私はそう考えてる」
まさにとだ、リーはシェリルに話した。
「私は幸い読むの速くてな」
「その分よおさんの本読めるな」
「一番読むのが速いのは英語と中国語やが」
これは彼がシンガポール人だからである、シンガポールではこの二つの言語が公用語として用いられているのだ。
「日本語もな」
「速読出来るんやな」
「そや」
シェリルに一言で答えた。
「私はな」
「そやねんな」
「それで日本の小説もよお読んでるが」
「ええのが多いんやな」
「それで哲学書はな」
「あかんのもある」
「一番あかんと思ったのは吉本隆明やった」
リーは眉を顰めさせて言い切った。
「もう読むだけや」
「無駄か」
「何かわからん文章書いてるが」
それでもというのだ。
「中身はな」
「大したもんやなかったか」
「その挙句教理が全部どっかの宗教の受け売りのカルトの教祖を偉大と言うた」
「その時点で知れてるな」
「辿り着く先がそんなもんやと」
明らかにインチキの俗物に過ぎない輩だと、というのだ。
「それまでもや」
「碌なもんやないな」
「ある大学教授の研究室が荒らされて」
東大法学部教授である丸山真男のことである。
「必死に集めて大事にしてた資料や文献も滅茶苦茶になって落胆しながら拾ってたが」
「それをか」
「自分は図書館に並んで借りているとか言うた」
「必死で集めて大事にしてた本と借りた本が同じか」
「そんなこともな」
「わからんかったんやな」
「そんな程度やった」
戦後最大の思想家と持て囃されていた頃もだ。
「一ぺージ読んでな」
「読まん様になったか」
「一切読む価値がないと確信したからな」
一ページ読んだだけでというのだ。
「それは間違いやなかったわ」
「そんな程度か」
「今言うた通りの奴やったしな」
「カルトの教祖褒めてか」
「お金も出して手間もかけて集めた本と借りた本が同じともな」
「思ってた奴か」
「そんな奴の文章なんか読んでも無駄や」
リーはまた言い切った。
「時間のな」
「何も得られんか」
「小難しい文章の中身を考える時間があれば」
それならというのだ。
「わかりやすい文章読むことや」
「真理はわかりやすい」
「明解や」
そうしたものだというのだ。
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