第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「まあそれは仕方ないですね」
「ええ。またの機会に」
「はい」
「ところで」
高見沢が話題を振ってきた。
「佐野さん」
「はい」
「どうでしたか、うちの妹は」
「百合絵さんですか」
「はい。あれから何度かお会いしているのですよね」
「ええ」
佐野の返事が明るくなる。北岡はそれを見て政略結婚だとすぐに見抜いた。高見沢はここで政略結婚で佐野を取り込もうとしているのである。それをすぐに見抜いた。
「末の娘でしてね。歳が離れているだけに心配していたのですよ。いい相手がいないかと」
「そうだったんですか」
「ですが佐野さんが伴侶になって頂けるなら。それは願ったり適ったりですよ」
「いえ、私もですね」
佐野は上機嫌でそれに返す。
「百合絵さんのお人柄には感服していまして」
「ほう」
高見沢はそれを聞いて笑みを作ってきた。だが目は笑ってはいない。
「それは何よりです」
「ええ、こちらも」
北岡はその話を黙って聞いている。高見沢の魂胆は佐野もわかっているのを見抜いている。だがそれでも彼女を本気で好きになってきていることも。しかしそれは言いはしなかった。どうにも自分には無縁の話だと思ったからだ。
それで肉を口に入れる。その時見たフォークに何かが映っているのが見えた。
「!?」
「どうかしましたか?」
「いえ」
佐野の言葉に顔をあげる。
「何も」
「そうですか。じゃあワインが来ましたし」
「はい」
ワインで乾杯をする。三人がそれぞれ飲んだ後だった。
突然窓から何かが出て来た。それは得体の知れない異形の者達だった。
「なっ、何なんだよいきなり」
佐野はその異形の者達を見て驚きの声をあげた。
「何かの演出か!?」
「いや、これは」
北岡は冷静に辺りを見回して言う。既に他の客達は逃げはじめ店の者達も同じであった。ワインを持って来たウェイターももう何処かへ行ってしまっていた。
「違います。おそらく催しでも何でもないです」
「では何だ!?」
高見沢は立ち上がり身構えていた。格闘技の心得があるのであろうか。
「この連中は一体」
「先生!」
そこに由良がやって来た。すぐに北岡の前に出て来た。
「ここは危険です。すぐに」
「ああ。そうするか吾郎ちゃん」
北岡は彼の言葉に頷く。そして二人にも声をかけた。
「何かわかりませんがここはすぐに逃げましょう」
「うむ。そうだな」
「な、何なんだよこれ」
高見沢は冷静であったが佐野は結構狼狽していた。だが完全に我を忘れたわけではないのが救いであった。若しそうなっていたら高見沢も北岡も彼を見捨てて自分達だけで逃げていただろう。自分の身は自分で守れというのが彼等の考えだからだ。
「とにかく出口へ」
「いや、もう無理だ」
高見
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ