第128話『コスプレ』
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「お待たせー! みんなの分のコスプレ衣装用意したよー!」
「う……」
出し物決めから早2週間。あれから毎日、放課後に文化祭の準備をする習慣が生まれた。部活に行くのは少し遅くなるが、学校全体がそんな雰囲気なので大した問題ではない。
それで一応『カフェ』という名目なので、今までメニューをどうするか内装をどうするかなど色々話し合いが進んでいたが、今日ついに『コスプレ』の部分が完成したようだ。
大きな声で莉奈がクラス中に呼びかけると共に、服飾係の人達が長いハンガーラックを引っ張ってきた。そこには多種多様な服がぎっしりと掛けられており、思っていた以上に"本気"であることが窺える。
「こんだけの量、よく2週間で作ったな。文化祭当日に間に合うかどうかって話じゃなかったか?」
「それがね、ママの友達にコスプレ衣装いっぱい取り扱ってる人がいて、頼んだら全部くれたんだ」
「全部!? 随分気前が良いんだな」
「もう古いし子供サイズだから処分に困ってたんだって。でもでも、ほつれてたとことかもちゃんと全部私たちが直したから、実質新品みたいなものだよ」
そう言って、莉奈は1着の衣装を手に取り、見せびらかすように広げる。
「ほら、これとかすっごく可愛くない!?」
「お、おう、そうだな……」
確かに、莉奈が手に取ったヒラヒラの付いたワンピースは上品で美しいと思う。ただ、これを着るのが男子だと考えると反応に困ってしまう。
「それじゃあ早速──着てみて、晴登」
「は?」
「だから、はい。これ晴登の分」
「断る」
「何でよ! 男子は女装するってルールでしょ!」
「確かにそうかもしれないけど、俺は調理担当で裏方に入ったはずだ! コスプレする必要ないだろ!」
どちらかと言えば、ルールを守ろうとする莉奈の言い分の方が正しいのだが、女装コスプレに乗り気でない晴登の言い分も聞き入れて欲しい。
「わかってないなぁ。お客さんの見えないところでもこだわるのが大事なんじゃん」
「何その高めのプロ意識」
「いいからはい、これ持って廊下で着替えて。女子は教室で着替えるからいいよって言うまで入っちゃダメだよ」
「そんな理不尽な……」
色んな意味での理不尽を受け、肩を落としながら晴登は他の男子達と共に教室を出たのだった。
*
「……と、こんなもんか。すっげぇヒラヒラしてんなこれ」
渋々着替えを終え、窓を鏡代わりにして自分の姿を見ると、そこには水色を基調としたヒラヒラの多いワンピースを身にまとった、紛れもない『お嬢様』の姿が映っていた。
「これが、俺……」
女装なんて絶対似合わないと思っ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ