第128話『コスプレ』
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し、不思議とこの理由を疑う人は未だにいない。
「結構凄いんだよ。特に演出が」
「何それ気になる。今度見せてもらおっと」
天野のマジックは本物だ。マジックそのものも凄いが、何よりエンターテインメントを理解している。彼女はいずれ大物マジシャンになるだろう。
それにしても、今度見せてもらおうって、まだ彼は天野と仲良くなっていないはずなのに。その行動力は本当に尊敬する。
「三浦くーん、メニューについて話したいんだけどいい?」
「あ、はーい。今行きまーす。また後でな、大地」
「へいへい」
同じ調理班の人に呼ばれ、晴登はドレスで重たい腰を上げる。
教室の装飾作りなど準備は着々と進んでおり、もうすぐ文化祭が始まるのだと思うとやっぱりワクワクしてきた。初めての文化祭。どんな風になるんだろう。
あれ、そういえば誰か忘れてるような……。
*
「見て見てチノ、このハルトすっごく可愛くない?!」
「おぉ! 何このお宝写真!」
いつの間にか現像された例の写真を結月が持っており、それを智乃に見せびらかしている。当然、智乃の食いつきは尋常じゃない。
「莉奈め、消せって言ったのに……」
「ごめんねハルト、ボクがお願いしたの」
「ぐ……」
男装結月が女装晴登をお姫様抱っこするというツーショット写真。これを結月が絶対に欲しがることはわかり切っていたし、何なら晴登にも黒歴史である点を除けば写真を欲する理由はある。
だからこそ、こうして本当に申し訳なさそうに謝られると怒るに怒れない。
結局、「これ以上誰にも見せびらかさないこと」を条件として、所有を許可した。
「お兄ちゃん、文化祭当日もこの衣装着るの?」
「そのつもりらしい。俺裏方なのにな……」
「じゃあ見に行かせて!」
「それ目的ならお断りだ」
日城中の文化祭は招待制であり、生徒が家族や知り合いに招待状を渡すことで外部の人も文化祭を訪れることができる。
つまり裏を返せば、招待状を渡さなければ文化祭には参加できないということ。兄の女装を見たがる妹の心理なんてからかいたい以外に考えられないし、それ目的なら妹とはいえ招待状は渡せない。
「え〜じゃあ今着てよ。服あるんでしょ?」
「え、あるにはあるけど……嫌だ」
「何で! いいじゃん! 減るもんじゃないでしょ!」
「減るんだよ! 俺の中で何かが!」
ぎゃあぎゃあと兄妹喧嘩が勃発。その理由がまさかの女装とは誰も思うまい。
すかさず「まぁまぁ」と、結月が仲介に入る。
「もうハルトったら、お兄ちゃんなんだから妹のワガママくらい聞いてあげないと」
「……本音は?」
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