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星河の覇皇
第八十三部第四章 戦線崩壊その五

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「普段強いってな」
「自分から言ってる様な奴がですか」
「するものらしいな」
「そうなんですね」
「まあ大抵の奴はな」
 士官はこうも言った。
「戦闘の前はな」
「トイレに行きますよね」
「漏らしたら一生の恥だしな」
「軍にいる間ずっと言われますね」
「そんなのだからな」
 それでというのだ。
「もうな」
「本当に大抵の人間は」
「もう戦闘前にな」
「トイレに行ってですね」
「出るものを出なくするんだよ」
「こういうのは出すもの出したら出ないですからね」
「そうだろ、小さい方も嫌だけれどな」
 ここで士官はこうも言った。
「大きい方を漏らしたらな」
「もう終わりですね」
「ああ、もうな」
 その時はというのだ。
「何もかもがな」
「そうですよね、俺実は小さい方を考えてましたけれど」
「そっちも漏らすだろ」
「そうですよね」
「何でも日本だとな」
「連合のあの国ですか」
「あの国の戦乱の時代だとな」
 即ち戦国時代のことをだ、士官は兵士に話した。
「徳川家康って人がな」
「確か将軍でしたね」
「ああ、征夷大将軍っていう日本の政権の長でな」
「その人がですか」
「戦争に散々に負けてな」
 三方ヶ原の合戦の時だ、この戦いで徳川家康は武田信玄に散々に打ち負かされた。彼の人生最大の敗北とさえ言われている。
「それで逃げる時にな」
「やっちゃったんですか」
「何でも大きい方をな」
 そっちをというのだ。
「そうしたらいいな」
「それはまた」
「それで逃げて城に着いた時にな」
 その時にというのだ。
「気付いたらしいな」
「漏らしたってですか」
「馬に乗っていてその鞍がやけに臭くてな」
「ああ、もうそれは」
「わかるだろ」
「はい、漏らして臭かったんですね」
「そんな話もあるからな」
 これは本当にあった話だという、そして家康はその時の自分の姿を描かせてその姿を生涯の戒めとしたという。
「だから戦闘前にはな」
「トイレに行って」
「出来れば大きい方もな」
 こちらもというのだ。
「出しておいた方がな」
「いいんですね」
「ああ、出そうならな」
 それならというのだ。
「もうな」
「後のことを考えると」
「だからいいな、それにな」
「それに?」
「こうした話も出来た方がいいだろ」
 士官は今度は気さくな笑顔になって兵士に話した。
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