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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その4
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く応戦していた。
幾多の死線を潜り抜けてきた歴戦の勇士である鎧衣は、闇夜を照らす提灯のごとく、彼らを誘導し、安全な場所へと後退させていった。
鎧衣は、巧みに地形を利用し、自身の姿を敵の砲火にさらさなかった。
 流石、デルタフォースの隊員である。
冷静さを取り戻した彼らは伏射(ふくしゃ)姿勢のまま、負傷兵を引きずり、ジープの付近まで近づく。
背嚢にしまってある伸縮式の携帯対戦車砲M72LAWを取り出し、砲身を引き延ばす。
射撃準備が整うと、即座に前方の闇の中に向けられる。
雷鳴に似た鋭い砲声が、闇夜を引き裂いた。



 M72LAWから発射された砲弾が、GRU支部が置かれた建屋の至近で炸裂する。 
漆黒の闇夜を背景に、猛烈な火の手が上がる。
「なんだ!どうした」
壮絶な銃撃戦が始まったことを受けて、後方の建屋にいるGRUのレバノン支部長は慌てた。
「ハッ!」
意表を突かれたGRU大佐は、狼狽の色を顔に滲ませる。
「この肝心な時に……敵が攻めてくるとは」

 GRUはKGBの秘密連絡網の蚊帳(かや)(そと)だった。
ソ連の諜報組織は複数あるも、すべて縦割り人事だったため、人材交流や横のつながりは薄かった。
KGBとGRUは互いをライバル視し、困っていても助けなかったのだ。
 
 GRU支部長の嘆きを受けても、ほかの幹部たちは何の意見も挟みようがなかった。
米軍の特殊部隊襲撃の事情に通じていなかった彼らは、種々雑多な怒号叫喚を飛び交わす。
「こうなれば、手当たり次第に出撃させろ」
支部長は、振り返って、後ろにいるGRUの工作員に指示を出した。

 まもなく、兵士たちを満載した数台の武装トラックが、鎧衣たちの陣地めがけて、乗り込んでくる。
チェコ製のスコーピオン機関銃とVz 58自動小銃で武装した黒覆面に、カーキ色の戦闘服を着た一団。
彼らは、パレスチナ解放人民戦線(PLFP)の戦闘員であった。
 
 喚声を上げ、小銃を乱射しながら、迫る数百名の戦闘員。
大軍勢の接近によって、戦闘は激化の一路を辿っていった。

 激烈な掃射の間を縫って、白銀が鎧衣の目の前に現れる。
「なんだ、白銀君、君一人かね」
 白銀の姿を認めると、鎧衣の顔に落胆の色がありありと浮かんだ。
マサキと合流して連れてくるなどと、白銀は一言も言っていないのだが、ひそかに期待していたようだった。
「鎧衣の旦那、基地の爆破準備をしている途中で、デルタフォースの隊員と合流できました。
あとは脱出するだけです」
20名ほどの特殊部隊員が、彼の後ろから音もなく現れる。

 鎧衣の表情が、にわかに曇りだす。
「このままではまずい」
思わず、うつむいて沈黙してしまった。
「どうした、ミスター鎧衣!」
デルタフォースの
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