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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う
どうあってかあたしは、追われている
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ヴァントだけじゃないんだ。」

起き上がろうとする以蔵の側に立つ女性の姿が。
両手でしっかりとかまえられた拳銃からは、撃ったばかりの証拠として硝煙が立ち上っていた。

「…!」

油断した。
サーヴァントがいるなら近くにマスターはいる。
岡田以蔵というサーヴァントに夢中になっていたあまり、そのマスターの存在を忘れていた。

「別にお前の生死は問わないらしいが、生け捕りにすれば失った信用も取り戻せるかもしれない。」

そう言いながら、以蔵のマスターであろう女性は銃口をこちらに向けたままゆっくりと近付いてくる。

「…っ。」
「風穴を増やしたくないなら妙な動きはしない方がいい。第一、その怪我ではもうお得意の蹴り技は出来ないだろう?」

正解だ。
腿をおさえ、焼けるような痛みに耐えながら溢れ続ける血を少しでも止めようとしているあたしは、もうさっきまでのような渾身の蹴りはできない。
力を入れれば痛みが走る。
蹴ることも、走ることも出来なくなった。

「…サーヴァント、紫式部はどこだ?」
「…。」
「答えろ。」

銃口はあたしを捉え続けている。
万全の状態でない今、避けることは非常に難しい。

すると、

【言っただろ?変わりなよ。】

また出る。菫の言葉(メッセージ)

「?」

無論、その泰山解説祭は以蔵のマスターからも見えていた。

「なんだそれは?」
「知らない。一方的なスパムメールみたいなもんだよ。」
「…はた迷惑だな。」

冗談を言うも女性は隙を見せない。
この女性、見た目からしておそらく未成人…学生だったのだろうか?
しかし彼女にあどけなさは一欠片もなく、曇った瞳がこちらを揺らぐことなく見つめ続けている。
分かる。彼女はプロだ。
さすがは財団お抱えの傭兵だとそこだけは褒めるとしよう。

【あぁ分かった。ボクに嫉妬してるんだろ?】
「…!」

その時だった。
菫の言葉が、いきなり核心を突いてきた。

【無理もないよねぇ?(ボク)は香子から色々貰って、(お前)はなぁんにも貰ってないんだから。】
「…黙れ。今それどころじゃない。」

無意識に手が震える。
知らないうちに拳を握っている。

【ここまで来たらどうなんだろう?この身体の主人格は、(ボク)(お前)?】
「いいから黙れぇッ!!」

怒りが痛みを麻痺させ、あたしは叫んで立ち上がる。
しかし、

「が…っ。」
「静かにせぇ。黙るのはおまんじゃ。」

うなじに衝撃。
それと同時にあたしは意識を失った。


?


「ふぅ、なんとか片付いたのう。」

いつの間にか以蔵は背後に回り込み、葵の首を刀の柄で殴りつけて気絶させた。
力無く
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