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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その6
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……」


 ソ連戦術機隊の接近の一報を受け、戦艦アリゾナの艦橋内が騒然となる。
艦長は艦内電話の受話器をつかむと、落ち着いた声で命令を下す。
「全艦艇に告ぐ。これより対空戦闘に入る」
砲術長の声が艦橋に響き渡る。
「主砲、射撃用意!」
対地砲撃を行っていた三連装の主砲が、一斉に旋回し、艦の上方に砲身を向ける。
「レーダーに連動良し」
艦載されたロケットランチャーと誘導装置も、連動して射撃準備に入る。
「自動発射に切り替えた後、スパローミサイルとスタンダードミサイルをありったけくれてやれ!」
上空に向け、探照灯が煌々と照らされると、轟音とともに一斉に火を噴いた。

 戦艦アリゾナやミサイル巡洋艦は、遠距離からの火力投射に重点を置いた軍艦である。
無論、対空機関砲やスパローミサイルを積載しているも、艦隊の防空能力は後のイージスシステムを搭載した駆逐艦に劣った。
 防空装備のフリゲートや駆逐艦を随伴しなかったのは、BETA戦争の戦訓で、ほぼ空からの攻撃がなかったためである。
 
 光線級の脅威は恐ろしかったが、戦艦の大火力の前に鎮圧できたので、時代を逆行するかのように大艦巨砲主義に各国の海軍はその武力を求めた。

 戦術機は、BETAとの格闘戦(ドッグファイト)が、主目的である。
航空機より軽量な装甲板と、新開発のロケットエンジンで、自在に空間を跳躍できるように特化した機体である。
基本的に、ロケットランチャーやミサイルのような重く高価な兵器は装備しなかった。
装備は外付けの発射機構を用いれば可能であるが、いざ装備すると機動力が落ち、被撃墜率が上がった。
ロケットランチャーやミサイルは、後方の砲兵や自走砲に依存することになった。

イリューシン20の機中にいるシリア派遣軍の指揮官は、戦術機隊を鼓舞する。
「突撃しろ、防空装備も甘い戦艦を連れた米艦隊なぞ、わが敵ではないぞ」
耳を聾する砲撃と、目をくらます大火力の閃光を目の当たりにした彼は、だんだんと平常心を失っていった。
無謀にも、大規模な航空攻撃での米艦隊への突撃を命じたのだ。


 ダイヤモンドに比する硬度を持つBETAをも、一撃で粉砕する大火力の前に、軽量な戦術機は無力だった。
退避する間もなく、閃光の中に消えていった雷撃隊。
烈火と衝撃波にはねとばされた戦術機の装甲は、爆風と共に宙天の塵となっていた。

 かくしてベイルート洋上では、シリア派遣ソ連軍と米艦隊の熾烈な戦闘が始まった。
一連の流れを見て居たマサキは、意識をそちらのほうに移す。
「ほう、露助のロボットどもが、群れを成して米艦隊に襲撃を仕掛けたのか……」
対空機関砲の弾が、雨の如く降り注いでくる。
「フハハハハ、死に急ぐとは……愚かなものよ」
流れ弾で、港湾にある石
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