第二章
[8]前話
「いいな」
「はい、逃げずに」
「アルベリヒの軍勢と共にだ」
「ローゲの炎に焼かれ」
「世を人に任せるのだ」
こう言ってだった。
ヴォータンは主神の座に腰を下ろし薪が積まれるのを見守った、薪はすぐにヴァルハラの至る場所に積み上げられた。
やがてヴォータンの槍を切ったジークフリードが殺された、そしてブリュンヒルテは彼の亡骸の周りにやはりヤドリギの薪を積ませ。
そこに火を入れた、ローゲであるその火は忽ち燃え上がり炎となってだった。
ジークフリートを包んだ、そこにブリュンヒルテも入ってだった。
炎はさらに燃え上がり天に向かっていった、そこにあるヴァルハラに。
途中ヴァルハラに攻め上がらんとしていたアルベリヒと彼の軍勢を焼き尽くした、それでも勢いは止まらず。
遂にヴァルハラに至った、そしてだった。
まずはヤドリギの薪が燃えた、そこからヴァルハラ全体を包み。
ヴォータンにも迫った、ヴォータンは玉座に座ったまま迫る炎に声をかけた。
「ローゲよ、戻ってきたな」
「今ここに」
炎から燃え盛る髪の毛に黒い肌の陰のある顔の男が出て来て言ってきた。
「参りました」
「待っていた、ではな」
「私はもうここからです」
「完全に炎に戻るな」
「神格を捨て」
自らそうしてというのだ。
「後は人に委ねます」
「そうするな」
「ヤドリギを燃やし」
「このヴァルハラも焼いてな」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「その後はです」
「火に戻ってか」
「全ては人に」
「わかった、我等は共に消えよう」
「そうしましょう」
「ヤドリギと共にな」
「ヤドリギは世に残りますが」
それでもとだ、ローゲは話した。
「もうです」
「神のものでなくな」
「人のものになります、では」
「うむ、消えよう」
ヴォータンは微笑んで言った、そしてだった。
ローゲが戻った炎の中に消えていった、ヴァルハラは紅蓮の炎に包まれその中に消え去った、炎が消えた時何もなくなっていた。後に残ったものは人の世だった、そして。
「ヤドリギも使おう」
「この木もな」
「かつては神々が使ったが」
「もう神々は消え去った」
「後は我々が使わせてもらおう」
人々はこう言ってヤドリギを手に取った、そうして彼等のものとしたのだった。神々が消え去った後で。
ヤドリギを集め 完
2023・1・15
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ