第四章
[8]前話
「いいな」
「それでは」
「帰るぞ」
この言葉を最後にしてだった。
アポロンは従神と共にオリンポスに戻った、そうしてヘルメスと何も知らないという顔で会って話をした。
そして後日だった。
ヘルメスが連れて来た子供の頭に山羊の角が生え脚の膝から下が山羊のものであるその神を見て言った。
「その者は何だ」
「息子のパンと申します」
「子供が出来たのか」
「妻との間に」
「そうか」
その妻が誰かは察したがアポロンは言わなかった。
「それは何よりだな」
「父上に牧神にしてもらいました」
「それは何よりだな」
「いや、可愛くて」
ヘルメスはアポロンに明るく笑って述べた。
「仕方ありません」
「自分の子供だからか」
「はい、ですから」
「これからはか」
「このパンと共にです」
まさにというのだ。
「そして妻ともです」
「楽しく暮らすか」
「そうしていきます、妻がいて子供もいる」
ヘルメスはアポロンに笑顔のまま話した。
「これ以上の幸せはです」
「ないか」
「そう思います」
こう言うのだった。
「まことに」
「そなたも夫であり父ということか」
「そうかと」
まさにというのだ。
「前はそうしたことはです」
「思わなかったか」
「全く、ですが」
「これからはだな」
「司るものを動かしていき」
商売や伝令そして泥棒をというのだ。
「そうしてです」
「家族ともだな」
「幸せになります」
「ならそうしていくのだ」
「必ず」
こう言ってだった。
ヘルメスは我が子を愛情に満ちた笑顔で見た、アポロンはその彼を見てあらためて思った。何かとある彼にもそうした一面があるということを。それは決して悪いことではないということも。
ピュアマーキュリー 完
2022・12・16
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