第二章
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「贈りたい」
「そうですか、そしてですね」
「あの方に喜んで頂くのですね」
「左様ですね」
「そうだ、彼女の笑顔の為ならな」
ここでも頬を上気させて話した。
「私は何でもする、ではな」
「これよりですね」
「あの方の下に行かれますね」
「そうする」
こう言ってだった。
ヘルメスは軽やかな青年の姿のまま森に行って想い人であるニュムペーの一人と共にいる時間を楽しんだ。
森で愛を語り合ってだ、可憐な顔立ちに葉の色をした長い髪の毛を持ち淡い緑の薄い生地の服に体を包んだ彼女に言うのだった。
「そなたと共にいられるだけでな」
「幸せなのですか」
「私は。だからな」
それでというのだ。
「これからもだ」
「お傍にいていいですか」
「離れないでくれ」
ヘルメスの方から切実に語った。
「そして私の館に来てな」
「オリンポスのですか」
「そこに入ってな」
そうしてというのだ。
「共に暮らしたい」
「ですがそれは」
「神でないそなたはか」
「出来ません、ですから」
「ではこの地に館を築いてな」
ヘルメスはそれならと答えた。
「それでな」
「共にですか」
「暮らそう」
こう言ってだった。
彼は実際にこの地に館を築いてだった。
そこに彼女を入れて共に暮らした、オリンポスにいることも多かったがここを別館として彼女と共にいる時を楽しんだ。
アポロンはその話を聞いても信じなかった、だが。
先に彼のヘルメスのことを話した従神にだ、こう言われた。
「ですがその地にです」
「館があるのか」
「あの方が建てられた」
「そしてその館にか」
「ヘルメス様はよく赴かれています」
「ではか」
「疑い様のないことかと」
アポロンに対してだ、従神は話した。
「やはり」
「ではだ」
アポロンはここまで聞いて述べた。
「私がこの目でだ」
「その地に行かれ」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「真実を確かめよう」
「それがまことかどうか」
「そのことをな」
「では」
「その地に行くぞ」
こう言ってだった。
アポロンはその地に従神を連れて赴いた、すると。
そこに確かに館があった、入り口にはヘルメスの像があり彼を讃える声が館の中から聞こえてくる。そして。
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