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ネイティブラブ
第一章

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                ネイティブラブ
 タヒチに日本から仕事で移住してだ、今泉一樹はまずこう言った。一八〇近い背で色黒で小さな目である。黒い髪の毛は短く顔立ちは何処か猿を思わせる。
「暑いですが」
「いい感じだよね」
「はい」 
 タヒチの支社長の田中浩二に応えた、田中は一八〇近い背で面長できりっとした顔をしている。黄色いサングラスをかけていて半袖のシャツと膝までの半ズボンがよく似合っている。
「噂に聞いた通りの」
「ここでも当然仕事はあるけれど」
「日本よりはのんびりしていますか」
「そうだよ、だからね」
「ここではですか」
「羽根を伸ばす感じでね」
 それでというのだ。
「過ごせばいいよ」
「そうですか」
「うん、そしてね」 
 田中は今泉にさらに話した。
「君独身だね」
「はい、そうですが」
「だったらね、彼女さんもだよ」
「作るといいですか」
「そうしたらいいよ」
「どうですかね、俺彼女いないですが」 
 独身でとだ、今泉は田中に笑って応えた。
「彼女はどうか」
「わからないかな」
「はい、まあ働きながら」
 田中に笑ったままこうも言った。
「泳ぐのも釣りも好きなので」
「どっちもだね」
「楽しみます」
「そうしたらいいよ」
 田中も笑顔で応えた、そうしてだった。
 タヒチでの生活をはじめた、田中の言った通りこの島は日本よりも遥かにのどかな雰囲気で仕事ものびのびと出来てだった。
 好きな泳ぎも釣りも楽しめた、そして食事もだ。
「随分ゆっくりとです」
「出来るね」
「はい」
 笑顔で述べた。
「本当に」
「ここはそうなんだよ」
 その食事、昼食を摂りつつ応えた。二人で店で注文した豚肉や魚それに果物がふんだんにあるそれを食べつつ話した。
「食べるのにじっくりだよ」
「時間をかけて」
「そうしてね」
「食べる場所ですね」
「日本にいると」
「特に東京ですと」
 今泉はこれまで自分がいた街のことを思い出した、言うまでもなく日本の首都であり世界屈指の大都市でもある。
「酷い時は」
「外でコンビニとかに買ってもらってね」
「誰かに」
「それで会社の中で食べるね」
「休憩なしで」
「もう食べるにしても」
 田中はパンを食べつつ話した。
「せかせかして」
「食べるまで働いて」
「食べ終わったらね」
 そうしたならというのだ。
「また仕事だね」
「そうですね」
「けれどね」
 それでもというのだ。
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