第二章
[8]前話
「てっきりね」
「いや、子供の名前が親が付けないと」
こう娘に返した。
「確かに私考えたけれどね」
「それでもなの」
「そう、それで名前どうするのよ」
「ううん、これから二人で考えるわ」
今は仕事に行っている夫と、と答えた。
「そうするわ」
「そうなのね、てっきりお母さんがうち平だから清盛とか重盛とか」
「そうした名前駄目よ」
今も先生をしている母はあっさりと返した。
「昔だと。今はいいけれどね」
「昔は駄目って」
「それ諱じゃない、諱は普通は呼ばれないから」
「けれど今平清盛って」
「平家物語読んだら入道殿とか他には官位で書かれてるでしょ」
母は娘に今度は自分が好きな古典のことからも話した。
「そうでしょ、あと義経さんだと九郎とか呼ばれるでしょ」
「九郎判官義経ね」
「義経が諱で九郎が今私達が考えてる名前よ」
「そうだったの」
「戦国時代でもね」
母はこの時代の話もした。
「伊達政宗さんは当時そう呼ばれなかったのよ」
「今じゃそう呼ばれていても」
「伊達は普通の名字、政宗は諱で」
それでというのだ。
「普段は伊達藤二郎って言っていて呼ばれていたのよ」
「そうなのね」
「それで本姓は藤原だから」
「諱と合わせて藤原政宗?」
「こう呼ばれることは滅多になかったのよ」
娘に真顔で話した。
「だから私もこの子によ」
「清盛とか名付けないのね」
「それでも二郎とかいう名前もどうかだし。そもそも親がね」
「名前付けるものね」
「そうでしょ、だからね」
「私達でなのね」
「名前考えなさい、いいわね」
「わかったわ」
彩花は母の言葉に頷いた、そして彼女と今度は母親になった心構えのことを話した、そのうえで仕事を終えて会いに来た夫にだった。
彩子の言葉を伝えそのうえで二人で名前を考えていった、程なくして二人が阪神ファンであることから彰信となった、だが野球については中日ファンの母はいい名前だと言いながらもこんなことを言った。
「博満ならよかったのに」
「いや、お母さん名付けないって言ったでしょ」
「それはそうだけれどね」
こう言ってそしてだった。
彩花の兄夫婦が息子に遼太郎と名付けると純粋にいい名前だと言った、彩花はそんな母を見つつ夫に話した。
「諱なんてものあったのね」
「ああ、いい勉強になったな」
「名前も歴史があるのね」
「そうだな」
このことを知ったことに心から思うのだった、我が子の名前のことを通じて。
諱は呼ばなかった 完
2023・3・26
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