第2部
第2部 閑話
勇者の女性事情
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かしい、ここは喜劇を観るところではなかった筈だ。
「あっはっはっは!」
隣ではアルヴィスが腹を抱えて笑っているし、さらに奥の席では、そんなアルヴィスを嗜めつつも、自身も涙を浮かべて笑いをこらえているピンク女の姿もある。
「あの馬鹿……!!」
すると、ちょうどステージにいた間抜け女と俺の目が合った。その途端、一瞬彼女の顔がこわばる。そりゃそうだろう。なぜならこのときすでに、俺の顔は凶悪な魔物にひけをとらない程の形相をしていたからな。
「好きな食べ物かあ……。さすがにそういう質問の受け答えの練習はしてこなかったワ」
「いや、あれはどう見てもあいつが悪い」
頭を抱えながら、俺は絶望を感じていた。もしあいつが優勝出来なければ、渇きの壺は手に入らず、ヘレン王女と婚約させられることになる。それだけは勘弁したいのだが。
「まあ、でも、あんな風に素直に自分を出せるって、羨ましいワ」
羨ましい? あいつが?
「ただ単に何も考えてないだけだろ、あいつの場合」
そう、あいつは単純なだけだ。だから、あいつを羨ましいと思うこと自体がすでにおかしいんだ。
「あっ、ミオったら、結局自分の得意なことを見せることにしたのね」
ピンク女の言うとおり、間抜け女が特技として選んだのは、正拳突きだった。というより、司会に促されてやったと言うのが正解だが。
俺たちの会話を聞いたアルヴィスも、間抜け女に視線を向ける。
「ミオの正拳突き、綺麗ねえ」
「ああ、それは俺もそう思……」
はっとなり、思わず口を塞ぐ。しまった、つい無意識に口走った。
案の定、抜け目なく聞いていたピンク女が、ニヤニヤしながら俺を眺めている。
「やっと言ったわね!? ミオが綺麗って!」
「違う! そういう意味で言ったんじゃない!!」
「じゃあどういう意味よ!!」
「あんなの、基本中の基本だろ! むしろ綺麗に出来なくてどうする! それにお前が言ってることとは主旨がずれてるだろ!」
「理由はどうあれ、ミオのことをそういう風に思ってるんだったら、本人に直接言えばいいのに。それにさっきアルヴィスんちでミオの姿を見たときだって、一言『綺麗だね』とか素直に言えば良かったじゃない!!」
「そんなのお前に関係ないだろ。それに、魔王を倒す旅の仲間には、必要のない言葉だ」
「よし、あんたには今有罪の判決が出たわ。大人しくアルヴィスの餌食になりなさい!」
「なあに? アタシを呼んだ?」
「呼んでない!!」
ダメだ、こいつらといるとどうも調子が狂う。特にあの間抜け女の話題になると、二人とも生き生きした顔で俺をおちょくってきやがる。
別にあいつの容姿をどう言おうが俺には関係ない。そのはずなのだが、なぜか素直に表現することができないのだ。
何となく落ち着かない心持ちの中、次の出場
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