第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その3
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ながら、舌なめずりをした。
カーキ色の戦闘服に黒覆面を着けた、PLFPの戦闘員が近寄り、大佐たちに告げる。
「とりあえずレバノン政府が用意したバスがございます」
外交官ナンバーのついたフォルクスワーゲンのマイクロバス、タイプ2を指し示す。
大佐は、大きなため息をついた後、KGB工作員と戦闘員たちを見回し、号令をかける。
「では乗り込もう」
タイプ2の後部座席にある、観音扉を開けた瞬間である。
背を向け、寝そべり、紫煙を燻らせている人物があった。
深緑色のシャツとズボンを着け、茶革の軍靴。
その姿は、まさしく帝国陸軍の防暑作業服、そのもの。
日本兵の軍服を着た男は、ゆっくりと背中のほうに顔を向けて、
「寝ている子を起こすなよ」と、低い声で答える。
東洋人を見て、彼らは途端に驚愕の色を示す。
誰もいないはずのワーゲン・タイプ2の中にいる野戦服姿の日本兵。
あっけにとられたKGB大佐は、食指で男を指し示す。
「貴様、この水も漏らさぬ警備をどうやって……」
「ハハハハハ」
満面に喜色をたぎらせながら、流暢なロシア語で答えた。
「次元連結システムのちょっとした応用さ」
女大尉の表情が、にわかに険を帯びてくる。
「誰だ、お前は……」
男はM16自動小銃を抱え、立ち上がると、相好を崩す。
「俺は、木原マサキ。天のゼオライマーのパイロットさ」
鎧衣たちと潜入したマサキは、外交官ナンバーのついたタイプ2を見つけると乗り込む。
銃を抱えたまま、後部座席に寝そべって、敵が来るのを待つことにしたのだ。
マサキは、満面の笑みで、唖然とするKGB将校たちを見る。
「俺の人形を盗んだ罪、その命で払ってもらうぜ」
そういうと、吸っていたホープの紙巻煙草を軍靴で踏みつけた。
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