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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その3
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「戦術機部隊の出撃を待たずに、順次艦砲射撃に移れ」
夏季戦闘服(サービスカーキ)姿の砲術長は、挙手の礼を執ると、
「アイ・アイ・サー」と力強く応じた。

 米海軍では、今日においても艦内での禁酒は、つとに有名であろう。
1914年のJ・ダニエルズ長官によって発令された「一般命令第99号」を嚆矢(こうし)とし、飲酒が厳しく戒められている。
 また、幾度の海戦経験から、引火の可能性がある艦橋内での喫煙も、ご法度だった。
だが、その様なことを忘れさせるほどに、この空間は戦場の熱気で興奮していた。

「全艦、戦闘配備完了」
砲術長の掛け声の後、艦長席から立ち上がった艦長は、双眼鏡でベイルート市内を伺う。
そして彼は、艦橋を一通り見まわした後、次のように指示を出す。
「砲術長、一つ派手に頼む。
われらがゼオライマー救出作戦。世界各国の新聞記者諸君が、見て居るのだよ」







 ベイルート港に米国艦隊現れる。
その一報を聞いた、KGBの国際諜報団は、大童(おおわらわ)だった。
美久誘拐を指揮したKGB大佐は、巨漢を揺らしながら、部下たちに美術品の搬出を命ずる。
 彼が個人的に集めた、古代ローマやアケメネス朝ペルシア時代の遺物で、本来ならばレバノン政府の許可なくば持ち出せない物であった。

「急げ、黄色日本猿(マカーキ)どもが来てからでは遅い」
そういって檄を飛ばすと、木箱に詰められた金銀財宝や陶瓦(テコラッタ)の塑像。
休みなく偽装工作員や現地協力者などの非合法工作員(イリーガルエージェント)が、トラックへと運び出す。
 
 
 複数止められたZIL-131トラックの荷台に次々と、美術品が積み込まれていく。
肥満体のKGB大佐は、美術品を運び出すさまを見ながら、流れ出る汗を拭きとっていた。
「例の女衛士は!」
鞭を持ったKGBの女大尉は、怪しげな笑みを浮かべながら、応じる。
「連れてまいりました。あとは科学アカデミーに連れて行って詳しく解析するだけですわ」
 後ろ手錠に猿轡、腰縄を着けさせられた美久が、引っ張ってこられる。
女大尉は、美久の長い茶色の髪をつかんで、手元まで手繰(たぐ)り寄せる。
「この女の事さえわかれば、ゼオライマーの秘密を丸裸にできましょう」
腰までの髪を乱暴につかまれ、腰縄の縄尻もろともぐいぐい引き寄せされる。
美久は、猿轡をされた唇から悲鳴をほとばしらせた。
「ン、ウウンッ……」
KGB大佐は、美久の顎をつかんで、ゆっくりと顔を近づける。
「ウへへ、ヒャヒャヒャ」
恐怖で恐れおののく表情をする彼女を、満足げに眺めながら、野卑(やひ)な笑いを漏らす。
氷室(ひむろ)よ。ウラジオストックについたら、タップリかわいがってやるよ」
2メートル近い巨体を揺らし
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