第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その2
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着けた鉄帽を被り、深緑の野戦服上下に、赤い布きれを両方の二の腕に縛り付け、磨き上げた茶革の軍靴。
白銀は、虎縞模様の鍔広帽子に迷彩服を着こみ、黒色のドーランを顔中に塗りたくって、熱帯用軍靴を履いていた。
ウィリスM38のコピー車両である三菱重工の「ジープ」に、これまたM2機関銃のコピーモデルを載せて。
鎧衣は、相変わらずのホンブルグ帽に、トレンチコートを羽織り、背広姿であった。
ただ黒革のD-3A手袋をし、M2機関銃のハンドルを握りながら、周囲に目を光らせていた。
「なあ、鎧衣。そんなひらひらとしたオーバーコートなどを着ていて、引火したらどうするんだ」
「木原君。これは私の戦闘服、バトルドレスなのだよ。
諜報活動や破壊工作では、如何に市井の人間に化けるかが重要だ。
故に、ホンブルグ帽にドブネズミ色の背広上下が、サラリーマンにふさわしい装いなのだよ」
ハンドルを握る白銀は、大声で尋ねてきた。
「ドレスといえば、先生。例のかわいこちゃんにドレスの一つでも買ってやらないのかい」
「アイリスにドレスを作ってやる話。今の件は、考えておこう」
マサキは、じろりと横目でハンドルを握る白銀の表情をうかがう。
恐ろしいくらいリラックスした表情であった。
不思議に思ったマサキは、めずらしく白銀の過去について、尋ねてみることにした。
「だが白銀よ。今からドンパチに行こうというのにそんな話ができるな……
やはり、お前も鎧衣と同じで死線をくぐってきたのか」
白銀は、うなりを立てるエンジンの音に顔をしかめるマサキのことを横目で見た後、
「ラオスにいたときはヘリに乗りながら最前線に向かう際は、こんな話ばかりしてたのさ」
「お前も鎧衣と同じで、南方にいたのか……」
白銀は、どこか、遠くを見つめるような表情になりながら、答えた。
「ああ、俺はラオス王国軍を指導する軍事顧問団に、参加していた。
ソ連の軍事介入がなければ、あのメコン流域の静かな王国は今も健在だった……」
ラオスもまた、ソ連の対外政策によって国を乱された地域だった。
傀儡の王族を立てて、親ソ容共の左派が全土を支配した。
マサキは、憤る白銀の表情を見ながら、安堵した顔色になり、
「まあ、俺もお前も、ソ連には恨み骨髄というわけか」
白銀はハンドルを握りながら、静かにうなづくばかりであった。
車は、やがてベイルート港の倉庫街に近づく。
しばしの沈黙の後、白銀は、覚悟したかのようにマサキに尋ねた。
「博士は何で、BETA退治に……」
左の胸ポケットから使い捨てライターとホープの箱を取り出す。
「たまたま、俺好みの人間がいたからさ。
好きになった人間を俺の奴隷として、飼ってみたくなった。
いい男がいて、いい女が
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