第八十三部第三章 今だ目覚めずその五十八
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「何があろうともな」
「はい、当時の日本軍の様な軍隊と戦うなぞ」
「何があっても避けたいです」
「例え勝てても恐ろしいものが残ります」
「そうした相手ですか」
「その狂気ではないまた別の恐ろしき心のまま戦う戦術もあるが」
特攻隊の様なそれがというのだ。
「しかしだ」
「そうしたものとは別にですね」
「オムダーマン軍は生存性を無視した兵器を考え出し」
「今使用している」
「そうなのですね」
「そうした兵器があるのか、過去にあれば」
ならばとだ、タンホイザーは述べた。
「私の過去の戦史への不勉強か。それとも」
「それとも?」
「それともといいますと」
「気付かなかったのか」
その可能性についても言うのだった。
「若しかして」
「と、いいますと」
「何かお気付きですか」
「この件で」
「人類は過去にだ」
タンホイザーは何か接点を感じた、そのうえでの言葉だった。
「ああした兵器を持っていた、そして」
「そして?」
「そしてといいますと」
「現在もだ」
今も尚というのだ。
「兵器として持っているかも知れない」
「オムダーマンが使っている兵器を」
「あの謎の兵器をですか」
「既にですか」
「持っていますか」
「そうかも知れない、だが」
それでもとだ、タンホイザーは話した。
「私は思い出せない、思い出すこともコロンブスの卵か」
「コロンブスの卵、ですか」
「何でもないことでも気付かない」
「気付くこと自体が難しい」
「ただ何でもないことでもですね」
「そのことに気付くか」
「それが問題だ」
まさにというのだ。
「それでだ」
「この度もですか」
「そういえば我々もです」
「我々もどうもです」
「気付かないです」
「長官のお話を聞いても」
「それでも」
周りの者達も言うことだった。
「どうしてもです」
「我々も同じです」
「どうも気付きません」
「私達にしましても」
「一体その兵器が何なのか」
「そこまでは」
「そうか、一体どういった兵器か」
タンホイザーは周りの者達、エウロパ軍宇宙艦隊司令部の中枢にいる面々も自分と同じだと知って思った。それは自分と周りは同じだという安堵感ではなく誰もわかりはしないのかという無念の感情であった。
それでだ、こう言うのだった。
「はっきりわかる者が欲しい」
「全くですね」
「そのことはですね」
「どうにもですね」
「ここの誰もわからないですね」
「エウロパ軍でわかるか、いや」
タンホイザーはその目を光らせて言った、青い目がその輝きによって湖からサファイアに変わっていた。
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