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二十一歳の卒業生
第一章

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                二十一歳の卒業生
 高校に入学してだった。
 早乙女五郎一七〇程の背で細面で眉が太く鉤爪形になっていてきりっとした目と口元で黒髪を短くしている痩せた彼は。
 自分と同じ黒の詰襟姿の鎌倉義盛壱八五の長身で筋骨隆々の身体に四角い顔に太い眉と丸い小さな目の彼ご近所同士の人物を前にして呆れて言った。
「何でいるんですか」
「何でって留年したからだ」
 鎌倉は顎が外れんばかりになっている早乙女に腕を組んで答えた。
「だから俺はまだ高校生だ」
「高校生って鎌倉さん俺が小一の時小六でしたよ」
「今年二十一歳になる」
「二十一歳で高校生って」
「一年二年三年で一年ずつ留年したからな」
「そんな人実在したんですか」
「何、大した理由はない」
 鎌倉は腕を組んで述べた。
「一年の時はダンプの正面衝突で長期入院した」
「それで出席日数が足りなくてですか」
「二年の時は北海道の山で崖から落ちて長期入院だ」
「北海道でも樋熊じゃないですか」
「そして三年の時は柔道の部活で大怪我をしてな」
「また長期入院ですか」
「それでだ」
 こうしたことが続いてというのだ。
「常に出席日数が足りなくてな」
「滅茶苦茶不幸ですね」
「人間生きていると何かとある」
「あり過ぎですよ、お祓い行って下さい」
「実は親に昨日神社とお寺とキリスト教の教会と天理教の教会に連れて行ってもらってお札やら十字架やら色々買ってもらった」
「お祓いも受けてですね」
「言い忘れたがお守りも買ってもらった」
 早乙女にこうも言った。
「神仏のご加護でな」
「今年こそですね」
「卒業してくれと言われた」
「そうですよね、もう運がないにも程がありますから」
 早乙女もそれはと返した。
「正直俺も今聞いて驚いていますから」
「そうだな、ではこの一年宜しくな」
「はい、まさか五歳年上の人と同じ高校にいるとは思いませんでしたが」
「ははは、世の中そんなこともある」
「滅多にないですよ、こんなこと」
 早乙女は眉を顰めさせて応えた、そのうえで高校生活に入ったが。
 鎌倉は学園生活を楽しんでいた、勉強もスポーツも優秀でまた年齢故か器が大きく気さくでだった。 
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