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八条学園騒動記
第六百九十話 カロリーは高いがその七

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「あの人はね」
「救われない人だったんだ」
「そうだったのね」
 こう言うのだった。
「本当に」
「そんな人もいるんだね」
「世の中にはね」
「残念だね」
「色々駄目な要素に満ち過ぎていてね」
「僕が一番わからないのは」
 ベンはコーヒーを飲みつつ首を傾げさせて言った。
「何でそれで自分がね」
「この世で一番偉いか?」
「思えたのかな」
 こう言うのだった。
「それがどうしてもね」
「わからないのね」
「うん」
 そうだとだ、ベンはケイトに答えた。
「わからないよ」
「何もなくてね」
「何もしたことなくて周りに誰もだね」
「皆から見放されてるとね」
「近寄って来ないのね」
 そうした状況だというのだ。
「つまり独りぼっちね」
「奥さんにも逃げられた位の」
「それでもね」
「偉いか」
「思えないわね」
「そうだよね」
 ベンは言った。
「普通は」
「私もそう思うわ」
「若し偉かったら」
 自分が思う様にというのだ。
「それこそだよ」
「周りにいつも人がいてね」
「お話を聞いたりしてるよ」
「そうよね」
「地位でもだけれど」
「財産でもね」
「人徳でもね」
 そういったものを備えていることこそ偉いと考えてだ、兄妹で話した。ベンはそのうえで言うのだった。
「あればね」
「自然とね」
「その人がどんな状況でもだよ」
「周りに人が集まって」
「そうしてね」
「頼りにされてるわね」
「けれどあの人は」
 今話しているカナダにいた時の隣人の親戚はというのだ。
「いつも一人でね」
「親のところしか行くところなかったわね」
「奥さんにも逃げられる」
「そんな有様で」
「偉いなら」 
 ベンはさらに言った。
「行く場所だってよ」
「あるわね」
「というかどんどん呼ばれて」
「忙しい位よね」
「引っ張りだこになって」
 そうしてというのだ。
「頼られてね」
「お話を聞かせてってなってるわね」
「そうなってる筈だよ」
「あれだね」
 ここでクララは言った。
「中国の漢の高祖の」
「劉邦さんだね」
「あの人は働いてなくて」
「怠け者のろくでなしだったよ」
 若き日の彼はそうであった。
「家でもね」
「遊び人で」
「酒好きの女好きで」
「本当のろくでなしだったわね」
「まああの人よりましだったね」
 劉邦はというのだ。
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