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個人で八千万借りると
第一章

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                個人で八千万借りると
 彼氏の水産関係の企業で働いているサラリーマンの大森融から直接だった。
 銀行から八千万の借金をしたと言われてだ、雪本芳美は仰天した。茶色がかったショートヘアで色白で優しい感じの垂れ目でえくぼと八重歯を持っている。背は一四九位であり職業は商社で働いているOLだ。
「八千万って」
「いや、お金の話は正直に言わないとね」 
 融は微笑んで話した、黒いあちこち跳ねた髪の毛でやや面長で太めの眉と優しい感じの顔立ちである。背は一八〇近く痩せている。二人共レストランでディナーを楽しんでいるのでどちらも会社帰りのスーツ姿である。
「だから言っておくよ」
「それだけ借金があるの」
「そのうえでこれからね」
 融は芳美にさらに言った。
「僕と付き合ってくれるかな」
「結婚を前提に」
「さっきプロポーズしたけれど」
 実際に彼はそうした、その後で言ったことなのだ。
「返事はね」
「ちょっと、考えさせて」
 かなり引いた顔でだ、芳美は融にこう返した。
「絶対に返事はするから」
「わかったよ、じゃあ待ってるね」
「え、ええ」
 芳美はワインを飲みながら応えた、一応彼の北海道の実家は小樽の漁業でかなりの利益があることは知っている、だが。
 八千万もの借金にまず考えが停止した、それでだ。
 返答は待ってもらうことにした、それでだった。
 次の日会社の昼休みに同僚で親友でもある高田夏奈黒髪を短くしていて童顔で一六〇程の背の明るい顔立ちの彼女を食事に誘ってだ。
 そこでこのことを話すとこう言われた。
「個人で八千万銀行からなのね」
「借りてるっていうのよ」
 真顔で海老フライ定食を食べつつ話した。
「これがね」
「それが闇金ならアウトだったわね」
 夏奈は豚カツ定食を食べつつ応えた。
「もうね」
「そっちだったら」
「けれどあれよね」
 夏奈は真顔で言った。
「銀行からよね」
「ええ、そう言ってたわ」
「それならいいでしょ、個人で銀行から八千万とか」
「何かある?って思ったのよ、私も」
「そうそう、それって相当信頼ないとね」
 さもないと、というのだ。
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