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写真を撮るときに一歩下がる親友がウザいので『人の顔を自然にデカくするカメラアプリ』を開発してみた
(5)いずれにせよ私の勝ち

[8]前話
 学校生活と芸能活動の両立で多忙の菜々子が、久しぶりの休みを取れたらしい。
 ということで、二人でカフェに入っていた。

「あー、やっと二人だけで会えてうれしー」

 パフェを食べながらそんなことを言う彼女を、わたしは心の中で(にら)みつけた。
 彼女の顔デカ写真をばらまくというテロ計画は潰えた。悪運の強い女だ。

 だが、それでも彼女に勝ちはない。
 なぜなら、いかに大顔ブームを起こしてわたしのテロを防いだところで、彼女のリアルは大顔ではないからだ。

 これから彼女と一緒に、普通のカメラアプリで写真を撮ればよい。
 それをネットにアップすれば、彼女の顔が小さいことはすぐにバレる。“大顔修正疑惑”で彼女は炎上するに違いない。

 一方、わたしは予想外の大顔ブームが幸いし、なんと彼氏ができた。充実した毎日を送っている。
 アプリ開発のノウハウも身に着き、将来の道も開けてきてきた気がする。
 だいぶ想定と違う展開になったが、結果オーライだ。

 私の勝ちだろう。

「やっと言えるわー。ホントにごめんね」

 ん?

「ほらー、私、すごい無神経だから。中学のころからさあ、あんたと写真撮るとき、私って一歩下がってたでしょ? あんたが顔の大きさにコンプレックスがあって嫌がってたなんて、全然気づいてなくてさー。
 でもある日、あんたが『顔デカメラ』で私を撮り始めて、私そこで初めて気づいて。ほんっと申し訳なくて」

 ……なぜ『顔デカメラ』の名前を知っている?
 おかしい。

「え。もしかして、アプリ制作を教えてくれてた則巻千兵衛って――」
「うん。あれー、中身は私だったの」
「……」
「でも、今さら謝っても、ってなっちゃってさー。だからせめて何かあんたにお()び? になるようなことをしてから謝ったほうがいいかなって思ってぇー。だからモデルになることにしたんだわー。モデルになって、がんばって人気出るようにしてー、がんばって顔デカブームを作ったの。
 これで許してもらえるかどうかはわかんないけどさー。これが私にできる精一杯の償い。ホントごめんねー」

 あ、負けました。




(完)
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