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星河の覇皇
第八十三部第三章 今だ目覚めずその五十三

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「おそらく魚雷位しかな」
「攻撃に使ったあれですか」
「あれ位しかですか」
「武器はない」
「そうした兵器ですか」
「駆逐艦程の防御力も武装もない」
 その艦にはというのだ。
「まさにな」
「では発見すればですね」
「撃破することは容易ですね」
「それならば」
「そうだ、見付けることが出来ればな」
 その場合はとだ、タンホイザーも認めた。
「撃沈することはどの艦よりも容易だ」
「そうした兵器ですか」
「オムダーマン軍が使用している兵器は」
「長官が思われるに」
「そうなのですか」
「私にはわかる」
 その軍事的才能、戦術のそれからとだ。タンホイザーは述べた。
「あの兵器はな」
「まさにですね」
「そうした兵器ですか」
「隠密性に特化し」
「そして他の能力をあえて犠牲にした」
「かなり極端な兵器ですね」
「そうだ、弱い兵器だ」
 タンホイザーはこうも述べた。
「実にな、しかしな」
「使い方によってはですか」
「非常に強力な兵器ですか」
「そうなのですか」
「そしてだ」
 さらにと言うのだった。
「その艦艇の存在をオムダーマン軍は隠蔽している」
「ですね、それも徹底的に」
「国境での戦いは謎とされてきましたし」
「今もです」
「あの攻撃は何であったか」
「そうした話になっています」
「エウロパ軍で気付いたのは」
 誰かとだ、タンホイザーは述べた。
「今は私だけかも知れない」
「長官だけですか」
「そこまでのものですか」
「この件は」
「若しかするとな」
 こう言うのだった、実際にこの件はタンホイザーの軍事的才能があってこそはじめてわかるものだった。
 そして彼が最も明確な形で気付いていた、だがモンサルヴァートにしてもこのことは彼程ではないが気付いている。
 それでだ、タンホイザーは今言うのだった。
「その私が言うが」
「そうした兵器ですか」
「オムダーマン軍が隠蔽している兵器は」
「そしてここで使ってきた」
「そうなのですね」
「国境での攻勢の時とな」
 さらにというのだ。
「おそらくこの度もだ」
「オムダーマン軍は使いますか」
「そしてそのうえで、ですか」
「勝利を手にする」
「そうしますか」
「彼は天才だ」
 アッディーン、彼はというのだ。
「その様な兵器を考えつくとはな」
「徹底した隠密性を導入し」
「防御力や機動力を無視している」
「攻撃力さえも」
「そうした兵器を考えるとは」
「連合軍の兵器はだ」
 タンホイザーはこの国の兵器の話もした。
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