敢闘編
第六十五話 トラーバッハ星域の戦い(前)
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」
「なんだと!」
「彼等は弱者です。弱者は常に強者の顔色を伺う。彼等に本当に同盟に帰属してもらう為には、その様な事はあってはならないと小官は考えております」
「それこそ貴官の存念だろう!」
「小官の考えは統合作戦本部長、国防委員長ならびに人的資源委員長、その他の各委員長が御理解するところであります。更には最高…」
「分かった!私は先に帰る事にする、それでいいか!」
「…重ね重ね失礼をお詫び致します、申し訳ありません」
ロボス親父が勢いよくドアを開けて部屋を出ていく。仕方ない事とはいえ、拙い事を言ってしまった…。深いため息をつく俺を見て、連れの筆頭、ダンネベルグ氏がおずおずと口を開いた。
「いいのか?卿の立場が悪くなるのではないか?」
「いえ、任務ですから。それに提督が居らっしゃっては皆さんがものを言いづらいのは事実ではありませんか?」
「まあ、それはそうだが…」
ダンネベルグの横に居並ぶミュンツァー、バルトバッフェル氏も苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「一旦、休憩しましょう。皆さん空腹ではありませんか?」
6月17日08:35
トラーバッハ星域近傍、銀河帝国軍、討伐艦隊、旗艦ノイエンドルフ
ラインハルト・フォン・ミューゼル
アントン閣下から映像通信です、とのオペレータの声が響いた。遮音力場内の映像には、ホッとした面持ちのアントン中将が映っていた。
“お手を煩わせて申し訳ありません、司令官閣下”
「心にも無い事を言うな」
“バレてましたか”
「子供の時分から卿を見ているのだぞ。それより状況はどうだ」
“はっ、一進一退であります。こちらが押し出すと相手は退き、こちらが退くと相手は押して来ます。ですので彼我双方共に損害はそれほどありません”
「それは良かった。報告にあった、敵は叛乱…同盟軍というのは本当なのか」
“はい。ですが、少し妙なのです。同盟軍艦艇には違いがないのですが、艦型が古い物ばかりなのです”
「ほう」
“状況を打開する為に一度急速接近後、単座戦闘艇を展開しました。その際の各艇長からの報告ですので間違いありません。少なくとも二十から三十年前の同盟艦艇である事は間違いありません”
アントン中将の報告を聞いて、伯爵の顔がこちらを向いた。
「同盟軍は艦艇不足なのか?最前線にそんなボロ船を送るなど」
「損耗覚悟で送り込んで来た…いや、それは有り得ません、三十年前ともなると電算機や推進器の性能もかなり違います。失礼を承知で申し上げますが、優位に戦いを進める同盟が、そんな死兵紛いの策を立てる事はありません。何かの間違いでは…」
参謀長の言う通りだった。奇をてらうにも程がある…だが一進一退の説明はつく。艦艇の性能が一段落ち
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