敢闘編
第六十五話 トラーバッハ星域の戦い(前)
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まう」
「仰る通りです」
伯爵の考えは派閥次元の、多分に政略的なものだが、確かにノルデン艦隊に功を立てさせないとノルデン伯爵はともかくリッテンハイム侯がいい顔をしないだろう。
紅茶をすすりながら概略図を見ていた伯爵が命令を下す。
「参謀長、艦隊を反転させよ。まずはアントン分艦隊から援護するとしよう」
「はっ…艦隊反転!反転後、艦隊針路を十一時方向に固定!」
それにしても…アントン、ベルタの両分艦隊は本当に同盟軍と戦っているのだろうか。事実なら、いや事実なのだろうが、そうだとすると奴等の意図が見えない。敵陣深く侵入し通商破壊…聞こえはいいが伯爵の言う通り一斉に、多発的に行わねば意味がない。ヤマト・ウィンチェスターやヤン・ウェンリー等を擁する敵の総司令部が、単独での通商破壊などという愚行を前線司令部に許すだろうか。
「参謀長…アントン分艦隊との合流はおよそ三時間後かと思われます。現時刻より一時間ずつ半舷休息のご許可を願います」
「そうだな、敵が同盟軍ともなればこれまでの様にはいくまい。大佐の進言を是とする。閣下、宜しいでしょうか」
「うむ、卿等のよいように。私も少し休ませてもらう」
伯爵が艦橋を去っていく。思わずため息が漏れた。三時間後には分かる、分かる筈だ…。
宇宙暦793年6月13日12:30
アムリッツァ星系、チャンディーガル、シヴァーリク郊外、ホテル・シュバルツバルト、
ヤマト・ウィンチェスター
「思ったより活気がありますね」
フォーク…あまりキョロキョロするんじゃない、まるでお上りさんだぞ…。そう、同盟領で今一番活気があるのはここだ。ここだけではない、今までイゼルローン前哨宙域と呼ばれていた地域は民間船の航行制限が解かれ、多くの商船が行き来する様になっている。制限は解かれたもののダゴンなどの星系は危険な為、エル・ファシルからアスターテ、ヴァンフリートを経由する一直線の最短航路が設定されている。ヴァンフリートは小惑星だらけで民間船でなくとも危険なのだが、やはり企業や商人達は商魂逞しい。資源採掘の為に数多くの小惑星を運搬し、資源取得と航路啓開を同時に行っている。勿論軍も協力しているが、軍と彼等とではやる気が段違いだった。以前、サイオキシン麻薬事件のとなったヴァンフリートW-Uの補給基地も軍民、いや官民共同で運営されている。前哨宙域から帝国方面に航行が許可される船舶は、同盟政府の許可を受けた企業所属のものに限られているものの、その企業連から委託された中小の企業も船を出している為、実際は全ての民間船が航行可能な状態だった。
「植民地、いや新領土バブルだな」
「バブル…ってなんです?」
「実際より大きく見える経済活動の事さ。俺もよく分からんが好景気感が多くの投資を生んでまた更に経済活動の規模が大きくなる。それ
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