敢闘編
第六十五話 トラーバッハ星域の戦い(前)
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の様だと」
「何を当たり前の事を言っておられるのだ、アントン閣下は」
参謀長の口振りにミッターマイヤー中佐は複雑な表情で言葉を続けた。
「いえ、叛乱軍は叛乱軍でも、自由惑星同盟軍と僭称する叛徒どもの艦艇と…」
「何だと」
俺達の会話が聞こえていたのだろう、参謀長の報告を受ける前にヒルデスハイム伯が割り込んできた。
「叛乱…ええい紛らわしい、同盟軍がクロプシュトック軍に手を貸しているというのか」
流石に参謀長も即答は出来ない様だ。考えられない事ではない、だがアムリッツァと此処では距離がありすぎる。アムリッツァが落ちて以来、攻勢を取れない我が軍は哨戒網を厚くする事で奴等に対処している。その哨戒網にかかる事なくこのトラーバッハまで同盟軍が小規模とはいえ艦隊を送り込める事は有り得ない。ましてやイゼルローン遠征軍が先行しているのだ。
「考えられない事ではありません、通商破壊の為の小規模な艦隊かも知れません」
「それは違うだろう参謀長、もしそうであれば他の星域でも似た様な状況が起きている筈だ。トラーバッハだけ通商破壊を行ったとて全く意味がない、こういう事は同時多発的に行った方が効果が上がる筈だ、違うか?」
伯爵の反論を聞いていたロイエンタール、ミッターマイヤーの両中佐が僅かながら驚いた顔をしている。まあそうだろう、俺も伯爵の意外な見識には驚かされたものだ。
「そうでした、申し訳ありません」
参謀長は陳謝したが、参謀長とて本当に通商破壊と思っていた訳ではないだろう。可能性の一つとして答えただけの筈だ。
「謝る必要はない…参謀長、この戦場は早めに切り上げた方がよさそうだな。敵は混乱しているし、相応の損害も与えている…ノルデン艦隊と映像回線を繋げ」
伯の指示にロイエンタールが短く返事をすると、一分ほどで回線が繋がった。
“司令官閣下…効果的な援護、忝ない。何用にございましょう”
「とんでもない、余計な手出しをしてしまったかと悔いておるところだ。私は部下達の救援に向かわねばならぬ。この戦場は卿に任せる。宜しいか」
“承ってございます。我が艦隊の力、とくとご覧あれ”
「頼みましたぞ」
映像通信が切れると、伯爵が大きな息を吐いた。
「我が艦隊の力か。参謀長、よくて膠着状態というところかな」
「…はっ、敵は混乱状態を脱してはおりません。小官としてはこのまま攻撃を続行したいところですが…」
「ミューゼル大佐、どう思うかね」
「小官も参謀長と同意見でありますが、閣下がノルデン艦隊に点数を稼がせる必要がある、とお考えなのであればそれが宜しいかと思います」
「うむ。攻撃を続行すれば武勲を横取りされた、と言われかねんからな。それに同盟軍の艦隊が組しているとなると、早々に彼奴等を片付けねば帝国領土の混乱は増すばかりになってし
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