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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その1
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国の首都、アンマンに来ていた。
この国はシリア、レバノンと陸路でつながるこの中東の小国。
 かつては反イスラエル、反英運動の拠点であったが、1970年に事情が変わる。
時の国王が、傍若無人の振る舞いをする過激派集団、PLOの存在を疎ましく思い、イスラエルとの対話姿勢を打ち出し始める。
 同年9月6日にPLOの過激派PFLPによる連続ハイジャック事件が発生した際、王は怒髪天を衝く。
即座に、パレスチナ難民ともども国外退去を命じた際、件の過激派は黙ってなかった。
市中の銀行や商家を襲い、金銀を略奪し、首都を焼き払い、政府転覆をはかった。
 
 ヨルダン王は、近衛兵を中心とした政府軍の部隊を送り、鎮圧したが話はそれで済まなかった。
1970年当時、PLO支援に積極的だったシリアは、陸軍部隊をヨルダンに侵入させ、PLOに加勢した。
 戦争の危機を危ぶんだエジプトの仲介もあって、停戦合意はなされたが、その恨みは骨髄に達するほどであった。
 だから、マサキたちが美久の誘拐事件でレバノンに乗り込むと聞いた際、国王は即座に協力を申し出たのだ。
 

 この世界で、一下士官であるマサキの立場では、おいそれと一国の王と会える身分ではない。
国王との謁見は、同行してきた御剣という形で行われた。

 鷹揚に挨拶をした後、御剣は国王に対して、今回の誘拐事件の協力に関し、尋ねた。
「では、氷室君の奪還作戦に協力していただけると……」
国王は、御剣の目を見ながら、
「72時間だけ、我が国の領土、領空の自由通行権は保障いたしましょう」
そして、脇の護衛官から紙を受け取ると、
「あと、レバノンに潜り込ませているわが情報部の報告によれば、氷室さんはおそらくベイルート市内にいると考えられます」
 それまでマサキは、端の方で静かに座っていたが、その情報を聞くや、立ち上がった。
「王よ。貴様の話、信じさせてもらうぞ」
そう言い残すと、周囲の喧騒をよそに、マサキは部屋を後にした。







 深緑の野戦服に、両肩から掛けた二本の弾帯、七連の弾薬納には20連マガジンが隙間なく詰められている。
腰のベルトには満杯になった弾薬納のほかに、ピストルと銃剣が二本づつ吊り下げられていた
鉄帽を片手に持ち、M16を担い、完全装備を付けたマサキを見た白銀は、
「先生、どこに行こうっていうんだね」
M16の最終確認をしていたマサキは、顔を上げて、
「今から、ベイルートのテロリストどもを抹殺(まっさつ)してくる」
「道案内は……」
「問題ない」

 この時代、人工衛星によるGPSシステムは未完成だった。
しかし、マサキは慌てなかった。
次元連結ステムがあれば、美久の場所は即座にわかる。
そして、最悪の場合、美久だけをゼオライマー
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