第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その6
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で、呼び寄せ、基地防衛の任務にあたらせていた。
KGB所属の軍医大尉は、興奮した面持ちで、
「これだけの資料を、ご覧になられてもですか」
大使は、訝しげに尋ね返した
「君は、信じるのかね」
「胸部エックス線写真、コンピュータ断層撮影装置の測定結果は十分な根拠になりうるかと」
セルブスキー精神研究所の研究員もいまだ信じられぬ面持ちで、答える。
「氷室は、日本野郎の、普通の女にしか見えんが」
会議に参加していた、ソ連外国貿易省のレバノン駐在員も、追随する。
この男は、貿易省の役人に偽装したGRU工作員であった。
「そうだとも、それをどう説明するのかね」
それまで黙っていたGRU大佐が、
「これ、以上議論の余地はないな。百歩譲って、木原がそのようなものを作ったとしても……
現在に至るまで、我々GRUの諜報網に引っかからなかったのだね……」
レバノン大使が畳みかける様に、KGBの軍医大尉をなじる。
「あの米国ですら人工知能の実用化は、まだ達成していない。まして小型化など……
その、人造人間とやらでも、機械があんなにはっきりと受け答えできるかね」
男は、憤懣やるかたない表情で立ち上がると、言い放つ。
「やれやれ、時間の無駄だったようだな!」
一斉に席を立つ幹部たちを見ながら、軍医大尉は一人残ったKGB大佐を見つめる。
「どうする……」
大佐から問われた軍医大尉は、
「コンピュータ断層写真の件が、どうも引っ掛かります。
それに、あの拷問を受けても即座に回復したのを見て居れば、機械人形としか思えないのです」
KGB大佐は、懐中より、曲線を描いたベント型のメシャムパイプを取り出し、火をつける。
「うむ」
ブランデーの香りがする、紫煙を燻らせながら、
「私も、その点は気になる。納得いくまで調べるかね」
「はい」
「では、その線でいきたまえ」
そういうと、肘掛椅子に深く腰掛けた。
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