暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
熱砂の王 その6
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
は、長い銀髪をラトロワと同じようにゴールデンポニーテールで結った婦人兵がいた。
男物の熱帯野戦服に、航空科を示す青色の襟章を着け、肩には三つの金星が並ぶ肩章。
「なんだ、ソーニャか……
ちょっと、例のゼオライマーとかいう機体が、気になって考えていた」
 
 ラトロワがソーニャと呼んだ上級中尉の階級章を着けた女は、副隊長だった。
名前を、ソフィア・ペトロフスカヤといい、偶然にも人民主義者(ナロードニキ)の女暗殺者と同じだった。
ただ、父称(ふしょう)が、アントノヴァナと違った。
(父称とは、スラブ文化圏やアラブ文化圏にみられる父系の先祖を遡るための名称である。
これがあることでその人物が私生児でないことを示し、一種の敬称や姓の代わりとして用いられた)

「そんなこと、気にしても始まらないでしょ。
悪魔の戦術機を、開発した男のことなんか……」
「じゃあ、何故BETAと戦ったんだ。そんな強い戦術機があるなら、ハイヴ攻略する前に世界征服を出来たろうに」
ラトロワの問いに、ソーニャは素っ気なく答えた。
「知らないわよ。そんなの、その日本野郎(ヤポーシキ)に聞いてみなさいよ」
シガレットケースから、細く巻いたマホルカを取り出して、火をつける。
(『マホルカ』とは、茎・葉ともに粉々にしたロシアタバコの事であり、ソ連時代は粉の状態で配給や販売された)
 今日でも、ソ連、東欧圏で、婦人の喫煙は珍しいことではなかった。
東ドイツでは婦人の約3割近くが喫煙し、より娯楽の少ないソ連では約半数が喫煙していた。
ただ、マホルカよりも、外国たばこのマルボーロやキャメルといった軽い吸い口のものが好まれていた。
 ソーニャは歴戦の兵らしく、麻紙を使った手巻きタバコを愛用していた。
だが、それとて高級な部類であった。
物資の欠乏が激しい最前線では、イヌハッカやレタスを乾燥させた物を刻んで、プラウダやイズベスチヤなどの新聞紙に巻いて、吸うほどであった。
「ただ、我々に与えられた任務は、ハバロフスクの雪辱(せつじょく)を果たす事よ。
ヴォールク連隊の衛士たちの(かたき)()ちという……」
ソーニャは、紫煙を燻し、どこか遠くを見つめながら、告げた。




 さて、レバノンのソ連大使館では、そのころ動きがあった。
駐箚(ちゅうさつ)大使以下、GRU支部長やソ連軍事顧問団の将校、KGBの幹部たちが一堂に会して密議を凝らしていた。

 
「氷室美久という女衛士が、人造人間(アンドロイド)だと!」
レバノン大使が、驚愕の声を上げる。 
「とても、信じられる話ではないね」
 防空ミサイル部隊を指揮する防空軍大佐も同調する。
BETA相手では役立たずになっていたミサイル部隊も、戦術機やゼオライマーには効果がある。
そういう事
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ