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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission5 ムネモシュネ
(2) トリグラフ中央駅~自然工場アスコルド
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』が分かるのに?)

 まずい。揺れるなと念じても一度浮かんだ未来図は消えてくれない。ジランドの目に訝しさの兆し。心臓の音が速すぎて集中できない。早く何か言わなければ。早く――

 ふいに、アルヴィンの手を他人の手が握った。

(ユティ?)

 ユティはアルヴィンを見ず、ただ手を握る力を強めて、離した。

「ここの動力源は光の大精霊アスカだそうですね。捕獲なさったのはご当主ですか?」
「そうだ。私が発見し、捕獲した。アスカの力はアスコルドの全エネルギーを賄って余りあるものだ。精霊の利用は、今後のエレンピオスの未来を左右する産業になるだろう」

 エレベーターが開く。アルヴィンたちが乗り込むと、ジランドは下降のボタンを押した。

「アスカのマナを効率的に施設に行き渡らせるには、アスカを工場の中央部に配置してケーブルを全館に通さなければいけなかったのでは?」
「無論それには労を費やした。ドーム中央にケージを据えることでケージの下からでなく上からという発想の転換により」
「アスカのマナを一点に集め、施設への分散を可能としたのですね。ひらめきを労苦を厭わず実現する、すばらしい姿勢ですわ」

 ありふれた賛辞ながらジランドは満更でもない様子だ。

 エレベーターのドアが開き、再び長い回廊と、奥のドア。全員がエレベーターから降りる。

「さすがはエレンピオスきっての名家、スヴェントの次期ご当主。ねえ、」

 アルフレド、とユティは唇の動きだけで彼を呼んだ。

 これだけ時間を稼いでくれれば立て直せた。アルヴィンはジランドの背後に歩み寄ると、銃のグリップを手加減なしでジランドの延髄に打ち込んだ。
 ジランドが床に倒れる。

「サンキュー。ごめんな、叔父さん」

 エリーゼから非難の声が上がる。だが、アルヴィンは冷静に答えることができた。

「こいつが時歪の因子タイムファクターじゃないなら、怪しいのはアスカとかいう精霊だ。けど、見張られてたら手は出せないぜ。――そもそも俺たちは、この世界を壊しに来たんだ」

 言葉にしても、今度こそ心は揺れなかった。定まっていた。

「そうだろ、ルドガー?」
「――ああ」

 ルドガーは固く、強く肯いた。――彼にはそう在ってもらわねばならない。ルドガーだけが分史世界の生殺与奪権を持つ以上、彼はアルヴィンたちの指針だ。

 代わりにアルヴィンも二度と揺るがない。惰性で仲間と付き合っていた1年前とは違う。自分の力で、「ここ」をアルフレド・ヴィント・スヴェントの居場所にするのだ。

 そのためにもまずは、助けてくれた仲間に礼を述べておこう。

「すらすらしゃべれんなら普段からそうしてくれよ。急に普通にしゃべり出したから度肝抜かれたぞ」

 ルドガーと
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