第八話 生贄の神々その十二
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「ほんまに」
「ううん、何かワインと同じで」
綾乃はそのウォッカを飲みながら施に応えた。
「幾ら飲んでも」
「酔わんか?」
「酔うけど」
それでもというのだ。
「何か幾らでも入る感じや」
「ほな樽分飲めるか」
「そうかも知れんわ」
応えつつさらに飲んでいく。
「これは」
「そやねんな」
「まあ飲めるだけ飲んでみるわ」
「エカテリーナちゃんみたいにか」
「まさか樽一つ分は飲めるとは思えへんけど」
それでもというのだ。
「まあ飲めるだけね」
「飲むか」
「そうするわ」
こう言ってだった。
綾乃はローストビーフやチキングリル、鱈のフライにツナサラダといったものを肴にウォッカを飲んでいった。
するとだ、やがて女が言ってきた。
「あの、もう樽分はです」
「空けました?」
「今ので」
「そうなんですか、けどまだ」
「酔い潰れはですか」
「してません」
顔は赤くなってもこう言うのだった。
「この通り」
「凄いですね」
「あの、それでエカテリーナちゃんも」
「まさにです」
それこそと言うのだった。
「そうした風でした」
「今のうちみたいでしたか」
「酔われていても」
「酔い潰れはですか」
「してませんでした」
「同じ位の酒豪ってことね」
アレンカールはそんな綾乃を見て言った。
「つまりは」
「うちはエカテリーナちゃんに負けてへんねんやね」
「ええ、お酒のことでもね」
「ことでも?」
「棟梁として負けてへんでね」
そうしてというのだ。
「そのうえでお酒でもよ」
「そやねんね」
「あの戦いでは及ばずだったかも知れへんけど」
それでもというのだ。
「そやけどね」
「棟梁としてはなん」
「その統治は負けてへんわ、十星連合はちゃんと治まってるから」
「そやからなん」
「負けてないわ」
決してというのだ。
「そして戦に勝つ為に」
「今はやね」
「塔を進んでいるのよ」
今自分達がいるこの場所をというのだ。
「そうしてるのよ」
「そういうことやね」
「ええ、政とお酒で負けないで」
そしてというのだ。
「戦ではね」
「勝つんやね」
「そうしましょう、しかしほんまに綾乃ちゃん強いわね」
アレンカールの言葉はしみじみとしたものになっていた。
「お酒は」
「まあ昔からね」
「昔から?」
「といってもはじめて飲んだ時から」
「ああ、十五歳になって」
「八条町は十五歳から飲めるさかい」
このことはこの町の条例で特例中の特例である、日本でもこの街でだけは十五歳から飲めるのである。
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