第八十九話 遊ぶことその二
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「遊びでもね」
「ああ、よくそれで言われますね」
咲もそれはと応えた。
「言われてみれば」
「そうでしょ」
「人気に溺れたとか」
「タレントさんでね」
「それで駄目になったとか」
「溺れるっていうのは泳ぐ時のそれ以外にも」
その例だけでなくというのだ。
「遊ぶ時でもでのめり込んだりそれで有頂天になったりして」
「そうなってですか」
「回りが見えなくなって何でも注ぎ込んだり天狗なったり」
「何か我を忘れる」
「そう、そうなることがね」
まさにというのだ。
「溺れることよ」
「そういえば泳ぎで溺れても」
「我を忘れてるでしょ」
「はい、私溺れた経験はないですが」
それでもとだ、咲は先輩にボールを投げつつ応えた。咲のボールは彼女の少し右の方に落ちて先輩はそれを拾った。
「必死で周りが見えなくなって」
「自分を見失ってるわね」
「そうですよね」
咲はそれはと頷いた。
「つまり溺れるということは」
「自分を見失ってるということよ」
「そういうことですね」
「回りも見えなくなって節度も忘れて」
「そうした状況ですね」
「けれどしっかりと準備をして」
事前にというのだ。
「はじめる位だとね」
「溺れないですか」
「ちゃんと心と身体もほぐれて温まって」
そうなり、というのだ。
「そうしたらよ」
「そうですか」
「だからね」
それでというのだ。
「事前の準備はね」
「しておくことですね」
「そうよ、何をするにも」
「遊ぶにも」
「溺れたら駄目だから」
「ううん、何でも溺れたら駄目ですね」
「ええ、これがね」
先輩は咲にさらに話した。
「お酒とかギャンブルだと」
「余計に悪いですね」
「ええ、ましてや犯罪なら」
法律に反することならというのだ。
「絶対にしたら駄目だけれど」
「犯罪ならですね」
「溺れるともうね」
「余計に悪いですね」
「ええ、麻薬に手を出して溺れたら」
そうなればというのだ。
「最悪でしょ」
「麻薬はそうですね」
その通りだとだ、咲も答えた。それも真顔で。
「よく言われますけれど」
「あんなのに手を出して」
「溺れたら」
「破滅しかないわよ」
それこそというのだ。
「身も心もね」
「どちらもですよね」
「咲っちも聞いてるわよね」
「怖いお話ばかり聞いてますよ」
咲はボールを投げつつ先輩に話した。
「覚醒剤とか」
「そうでしょ」
「一回使うと一週間寝ないで済むって」
「一週間寝ないでいられるなんてね」
先輩も投げ返しながら応えた。
「どんな危険なものか」
「わかったものじゃないですね」
「それで一週間寝ないだけでもね」
例え覚醒剤を使わずとも、というのだ。
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