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イベリス
第八十八話 合宿を過ごしてその十三

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「夜に個室で女の子が一人でいることはね」
「よくないですか」
「危ないわよ」
「襲われます?」
「ええ、用心しないと」 
 さもないと、というのだ。
「夜に一人でいるとね」
「夜道はそう言われますが」
「学校というか建物の中でもよ」
「危ないんですね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「気をつけなさいね」
「ううん、学校は安全だとです」 
 咲は先生に漫画を手にしたまま述べた。
「思っていましたけれど」
「それは油断よ」
「建物の中でもですか」
「夜に一人だとね」
「危ないですか」
「ええ、若しストーカーがいて」
 そうしてというのだ。
「小山さん狙ってつけていて」
「それで、ですか」
「つけてきて」
 そうしてというのだ。
「お部屋に一人でいて」
「そこを狙われたら」
「大変でしょ」
「そうですね、気をつけます」 
 それならとだ、咲もここで頷いた。
「これからは」
「そうしなさい、学校もよ」
「安全かというと」
「そうとも限らないのよ」
「何処でもなんですね」
「極論すればお家の中でもよ」 
 最もくつろぐことが出来て平和な筈のそちらもというのだ。
「油断したらね」
「大変なことになりますか」
「お家の中に変な人がいるとかだと」
「ああ、そんなこともありますね」
「聞くでしょ」
「確かに」
「色々な家庭があってよ」
 それでというのだ。
「その中ではね」
「変な人がいるお家もあって」
「油断したらね」
「大変なことになりますね」
「だから絶対に安心出来る様な」
 そうしたというのだ。
「場所でもないとよ」
「油断しないことね」
「そう、そして学校はね」
 今自分達がいる場所はというのだ。
「いつもいる場所でも」
「安全とは限らないんですね」
「そうよ、だから夜に一人でね」
「お部屋にいてはいけないですね」
「鍵をかけてならいいけれど」
「そうでないならですね」
「危ないわ、覚えておいてね」
「わかりました」
 咲も頷いた、そうしてだった。
 この日は先生に言われたことを機としてそのうえで休んだ、合宿は彼女にとっては色々と学ぶ機会になっていることを実感するのは後のことだった。


第八十八話   完


                2022・11・23
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