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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
魔法絶唱しないフォギアGX編
北上透の何気ない一日
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た様子でクリスに笑みを向ける。その姿にクリスは、やれやれと言った様子でハンカチを取り出し殴られて切れた箇所から滲み出る血を拭きとる。

「ったく、こんな奴らの為にまで……」

 不良達がいざこざに巻き込まれるなどただの自業自得ではないかと思うクリスではあったが、透はそれに否と答えた。

「え? こいつ等、透の学校の生徒なのか?」

 転入当初、この3人も透に対して絡んだ事があった。その時は見た目通り、暴力的でカツアゲの様な行為であったが、透はそれにも屈することなくそれどころか平然と受け流していた。
 打っても響かない透に早々に興味を失くした3人はそれ以降彼の事を無視し、今回クリスとの事を知って再び彼にちょっかいを出す事にしたのだが透の方は彼らの事を覚えていた。そして、同じ学校に通う生徒だからと言う理由だけで彼らを助けに入ったのだ。

 3人はその透の気高い精神に心を打たれた。不良である事に変わりは無いし、弱者に対して高圧的に出る事も辞さないが、そんな彼らにも誰かを敬う心はあったのだ。

「「「ありがとうございやす兄貴ッ!! このご恩は一生忘れませんッ!!」」」

 こうしてこの3人は、透の舎弟の様な立場となり、校内では常に透を敬いクリスに対しても敬意を表するようになったのだった。




***




 一通り話を終えて、また疲れがドッと来たのかクリスは大きく溜め息を吐いた。

 一方響達は、クリスの話を興味深そうに聞いていた。

「へ〜、そんな事があったんだ」
「透君らしいと言えば透君らしいね」
「って言うか、ホントにアニメみたいな展開ね」
「助けた不良に慕われるとはね」
「透さんナイスです!」

 響達から関心を向けられる透だが、彼は今の話の何処がそんなに凄いのか今一分かっていない様子で首を傾げていた。彼にとっては、この程度別に特筆すべき程の事でも何でもない様子だった。
 実際そうなのだろう。彼は既に一生分の悪意を受けた。それも偏にクリスを愛する為に。

 強い心と大きな愛を持つ彼にとって、多少の悪意など気にするような事でもない。ただ何時も通り、他人を敬い、他人を愛する、何気ない日々の一日でしかなかったのだ。

 相変わらずな透の様子に、クリスは呆れと同時に愛しさを感じた。こんな彼だからこそ、自分は彼を愛したのだと。

「よしっ! 十分休んだし、そろそろ行くぞ!」

 クリスの声に、透たちは立ち上がりあちこちを遊び歩いた。クリスを始めとした6人の女子に囲まれながら、だが透の視界には常に愛するクリスが存在し続けた。

 この日もまた、透にとっては何気ない、しかし掛け替えのない大切な一日として記憶に刻まれるのだった。
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