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第八話 記憶その四

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「おとんもおかんもわいを山の人達に預ける時めっちゃ悲しそうやった」
「そうだったのね」
「ああ、ほんまにな」
 実際にというのだ。
「そやったわ、まあ会えたらな」
「お会いしたいわね」
「この戦いが終わって若し生きていたら」
 その時にというのだ。
「じっちゃん達に家何処か聞いて」
「会いに行くのね」
「そうしたいな」
「そうなのね、私はね」
 嵐は無表情のまま空汰に話した。
「親が誰か知らないわ」
「そうなんか」
「父親も母親もね」
 そのどちらもというのだ。
「知らないわ、覚えているのは」
「何や?」
「あまりにもお腹が空いていて」
 そうしてというのだ。
「ゴミ箱を漁る烏や鼠達を見てどうして自分は生きているのか人間なのかをね」
「考えたんか」
「そうしたら後ろに社の人がいて」
「ああ、それでか」
「社に迎え入れられたの」
 伊勢神宮、そこにというのだ。
「それからは奇麗な服を着せてもらって食べるものも」
「不自由せん様になったか」
「他のことも何一つね」
 それこそといのだ。
「そして色々なことを教えてもらったわ」
「それで巫女さんになったか」
「そうなったわ、けれど」
 それでもとだ、嵐はさらに話した。
「自分の生まれも。聞くには」
「伊勢の人達からか」
「何でもヤクザ者の父親とその筋の家の母親で」
「それでかいな」
「私が幼い頃に二人共事故で亡くなって」
「それでか」
「親が亡くなって私は親戚もいなくて施設に預けられることになっていて」
 それでというのだ。
「その施設が伊勢神宮と縁があって」
「それでか」
「私のことを聞いた社の人達がすぐに察して」
 そうなってというのだ。
「迎え入れてくれたの」
「そやったか」
「どうも私がひもじいと思って」
「ゴミ箱の前におったのはか」
「両親が亡くなって」
 事故でというのだ。
「暫く経ってからで」
「それまではか」
「特に困っていなかったみたいよ」
「そやねんな」
「確かにヤクザ者の夫婦だったけれど」
「嬢ちゃんを育ててくれたか」
「そうだったみたいよ、だから顔も覚えていないけれど」
 嵐はさらに言った。
「感謝はしているわ」
「親御さん達をか」
「今でも時々お墓参りをしているし」
「ええことや、そうしてたらな」
 空汰は微笑んで話した。
「ご両親もな」
「喜んでくれるのね」
「絶対にな、まあわいもな」
「ご両親になのね」
「若し戦が終わって生き残ってたら」
 その時はというのだ。
「ちょっとな」
「会いに行くのね」
「嬢ちゃん連れてな」 
 嵐を見て笑顔で話した。
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