第八十三部第三章 今だ目覚めずその二十三
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「あのヌードルは豚の骨を煮てそこからダシを取るけれどな」
「あれもイスラムでは結構アウトですね」
「結構以上にな、鶏の骨の場合もあるけれどな」
それでもというのだ。
「流石に人はな」
「ないですね」
「あるものか、あったらな」
それこそとだ、先輩は新入りに話した。
「ホラーだろ」
「そっちのお話ですね」
「そっちの小説とか漫画とかのな」
「話ですね」
「実際にドイツでそんな話あったしな」
「またドイツっすか」
「そいつの話だったか」
先輩はここでも名前が思い浮かばなかった、カール=デンケや先程のフリッツ=ハールマンという名前を。
「どうだったかな」
「まあとにかくですね」
「何かその頃のドイツってな」
「そんな話が多いんですね」
「嫌なことにな」
「ナチスが出たからですか」
「ナチスが出る前の話だよ」
一次大戦からナチスが政権を握るまでの期間のことだというのだ。
「その頃のドイツって負けてな」
「戦争にですね」
「戦争に負けたらその国は酷いだろ」
「領土や賠償金を取られて」
「だろ?当時もそうでな」
サハラの戦争の様にというのだ。
「それでドイツもとんでもないことになってな」
「食うものがなくてですか」
「街には失業者が溢れて金の価値は暴落してな」
マルクのそれがだ、まさに紙屑になってしまい世界恐慌の時は驚異的なインフレ状態に陥ったのだ。
「しかも皇帝がいたのがな」
「戦争で、ですか」
「皇帝、帝政が倒れてな」
キール水兵暴動を機に皇帝は退位しオランダに亡命したのだ。これでドイツ帝国は終焉を迎えてしまった。
「後に共和制になってもな」
「その政府が、ですか」
「必死に頑張ってもどうにもならない時はあるだろ」
「ですね、人も国も」
「当時のドイツもそうでな」
「幾ら頑張ってもですか」
「どうにもならない時期でな」
まさに全てが崩壊した状況だったのだ、当時のドイツは。
「金は紙屑、食いものはないし街は失業者と浮浪者と孤児ばかりだよ」
「絶望的ですね」
「しかも戦勝国への賠償金や侵攻もあってな」
「余計にですか」
「国際的地位もなくなってな」
それまでは欧州の大国の一国であったがだ。
「そうなっていてな」
「もうどうしようもなくて」
「それでな」
そのうえでというのだ。
「モラルも何もかもなくなってたんだよ」
「そうなっていてですか」
「これまで皇帝が中心だったってのに」
「皇帝もいなくなって」
「もうどうしようもない状況でな」
「そんな連中が出て来たんですね」
「本当に何もかもが崩壊していたからな」
それが一次大戦終了からナチス登場までのドイツだった、異常犯罪者の数が特に多かったことがこの時代でも言われている。
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