第六十七話 阪神の勝利を聞いてその三
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「十二球団ダントツで最下位だからね」
「東京ドームいつもガラガラでね」
「三塁側の方がずっと多くて」
「甲子園なんかね」
「三塁側の方も黒と黄色だしね」
「もう皆わかってるのよ」
良識が世に戻ったというのだ。
「巨人がどんなチームか」
「そういうことよね」
「悪いことばかりするチームだってね」
「それがわかったからね」
「選手も誰も来なくなって」
「人気も落ちたのよね」
「もう巨人イコール悪で」
そしてというのだ。
「北朝鮮と同じ」
「そうそう、誰が応援するかってね」
「そうなってるわね」
「巨人なんていらない」
「そうね」
「その巨人が今日も負けたのね、じゃあ皆でそのこともお祝いして」
そしてとだ、富美子は満面の笑みで話した。
「そして今夜もね」
「飲むのね」
「阪神も勝ったし」
「景気よくね」
「そうしましょう」
笑顔で言ってだった。
富美子は吹奏楽部の仲間達と共に夕食の場に出た、そうしてこの夜も瀬戸内の海の幸を肴にしてだった。
日本酒を楽しんで、そこでだ。
富美子は飲みつつだ、こうも言った。
「お酒もね」
「巨人が負けるとね」
「美味しいわね」
「いつもそうよね」
「それだけで違うわ」
「この美味しいお酒飲んで」
コップで飲みつつだ、富美子は仲間達に応えた。
「明日もね」
「合宿頑張ろうね」
「楽しくね」
「そうしましょう」
「是非ね」
こう言ってまた飲む、だが。
ここでだ、富美子はふと気付いた様になってこんなことを言った。
「ただこのお酒ってね」
「どうしたの?」
「何かあったの?」
「広島のお酒だから」
この県のというのだ。
「それで肴も江田島で獲ってるから」
「ああ、カープね」
「広島だとね」
「そっちのチームよね」
「私達阪神ファンの娘多いけれど」
それでもというのだ。
「ここのお酒はね」
「そうよね、カープなのよね」
「広島だからね」
「食べてるものもね」
「全部そうよね」
「カープに思うところはないけれど」
それでもというのだ。
「そこが違うわね」
「そうね」
「考えてみればね」
「勝利の美酒とか言って飲んでるけれど」
「広島のお酒だから」
「食べるものまで」
「そんなのどうでもいいでしょ」
中国から来ている吹奏楽部の一年生がここでこう言ってきた、切れ長の細い目で黒髪で中背である。
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