第八十三部第三章 今だ目覚めずその二十
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「だからな」
「それで、ですね」
「もうそこまでの餓えはないさ」
人肉食に至るまでのそれはというのだ。
「流石にな」
「そうですね、何処でも」
「若し食う奴がいたら」
「相当なキチガイですね」
「ああ、そもそも人肉食うとかな」
それこそというのだ。
「普通じゃないどころかな」
「キチガイですよね」
「そんなことする奴はな」
先輩はさらに話した。
「相当なキチガイだよ」
「ごくごく稀にいますね」
「本当にごくごくな」
稀だとだ、先輩は新入りに強調して話した。
「キチガイの中でもな」
「特にキチガイですよね」
「キチガイの中のキチガイだよ」
「確かカニバリズムっていいますね」
「もうそんな風習も消えたしな」
「ああ、人食い人種ですね」
「それする部族は昔いたな」
先輩はこうした者達の話もした。
「確か」
「そうでしたね」
「ジャングルの中とかにな」
「あれは食べものがなかったり宗教的な意味があってですね」
「やっていたからな」
「迷信だってわかれば」
人を食えば何かあるという様なだ、例えば豪傑の肝を食ってその武勇や勇気を備えようという考えだ。
「誰も食わないさ」
「そうですよね」
「それで他に食いものがあったらな」
「尚更ってことで」
「大昔のドイツにいたらしいな」
「大昔っていいますと」
「二十世紀前半だよ」
この頃のドイツだというのだ。
「ホモで十代の子の肉を食うのが好きな奴いたんだよ」
「そんな奴が本当にいたんですね」
「ああ、フリッツ=ハールマンだったか」
先輩はその食人鬼の名前も出した。
「流石に最後は捕まったけれどな」
「そいつみたいな奴は稀ですよね」
「こんな奴そうそういるか」
先輩は新入りに即座に答えた。
「人殺して食うのが大好きな奴とかな」
「まず、ですね」
「いたら怖いだろ」
「一番傍にいて欲しくないタイプですね」
新入りにしれみればそうだった。
「本当に」
「俺もだよ」
「先輩もですか」
「誰が食われたいんだ」
「そうですよね」
「そんなとんでもない奴はさっさと死刑にしないとな」
それこそと言うのだった。
「駄目だろ」
「リアルで人殺しどころじゃないですしね」
「殺してな」
それに加えてというのだ。
「食うんだからな」
「最悪ですね」
「そんなキチガイはな」
それこそというのだ。
「即刻死刑にしないと駄目だな」
「本当にそうですよね」
後輩も同じ意見だった、それも完全に。
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