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ドリトル先生とタキタロウ
第十一幕その九

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「皆覚えてるね」
「忘れる筈がないよ」
「あの時は大阪のあちこち巡ったし」
「その中で織田作さんの幽霊と出会ってね」
「直接お話も聞いたわ」
「あの人も若くして結核で亡くなったけれど」
 終戦直後三十四歳で亡くなったことをお話するのでした。
「宮沢賢治さんもね」
「ああ、結核だったんだ」
「あの病気に罹ってしまったのね」
「若くして」
「それでなのね」
「三十七歳の若さでね」
 戦線は皆に悲しいお顔でお話しました。
「亡くなってしまったんだ」
「残念だね」
「物凄く沢山の名作を残してくれたのに」
「童話も詩も」
「そうしてくれたのに」
「そうだったけれどね」
 それがというのです。
「実は生前は作品は殆ど知られていなかったんだ」
「あれっ、そうだったんだ」
「今じゃ日本の誰もが知ってるのに」
「夏目漱石さんや森鴎外さんと同じ位有名なのに」
「芥川龍之介さんや太宰治さんにも匹敵するでしょ」
「そこまで有名な人なのに」
「詩人の草野心平さん達が紹介してね」
 そうしてというのです。
「世に広く知られてなんだ」
「それでなんだ」
「日本の国民的作家になったんだ」
「そうだったのね」
「そうだよ、そして僕も読んでいるけれど」
 先生もというのです。
「素晴らしいよ」
「そうだよね」
「先生あの人の作品好きだよね」
「それでよく読んでね」
「論文も書いたね」
「文章はわかりやすくて読みやすくて」 
 そうしてというのです。
「とても優しいよ」
「そして作品の中身もだよね」
「非常に魅力的で」
「素晴らしいものだね」
「そうだね」
「日本の人達に広く愛されているのは当然だよ」
 まさにというのです。
「本当にね」
「そこまでの作品だね」
「そうだね」
「文章も素敵で作品自体もいいから」
「読まれているんだね」
「子供が読んでも大人が読んでも素晴らしいよ」
 宮沢賢治の作品はというのです。
「本当にね」
「そうなんだね」
「それじゃあだね」
「先生はこれからも読んでいくね」
「そうしていくわね」
「勿論だよ」
 先生のお返事は一もニもないものでした。
「そうしていくよ。ちなみにあの人は菜食主義者だったんだ」
「あっ、それわかるよ」
「とても優しい人だからね」
「命の大切さをわかっている人だから」
「それでだね」
「そうだよ、ただ今の一部のヴィーガンの人達みたいに強制はしなかったよ」
 それはなかったというのです。
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